第5話次のプランを練る
「星奈さんとはちゃんと連絡とってるか?」
成瀬が会うなりニヤニヤして声をかけてくる。
人のことより自分はどうなんだというのはこいつには無駄な心配だろう。
「大丈夫。この前の食事の甲斐あって、雰囲気はすごく良くなった。」
「良かった。じゃあデートはどこ行くかは決まった?」
「いや、それは全く・・・」
力なく応える。そう、どこに行くのがベストなのかわからない。
初デートの誘いだ。ベストを尽くしたい。だが不安だ。
「あぁ・・・不安だ。デート失敗して次から会ってもらえなくなったらどうしよう。」
「お前は真面目だもんなぁ。いっそのことプロジェクトだと思って取り組めば?」
「プロジェクト・・・となると、1 回目の稟議が通り、次は指摘事項を踏まえた精査された計画の稟議だな。」
体制、計画とマイルストーン、見積りと類似プロジェクトとの比較、リスクと課題、などブツブツと言いながら集中する。
「いや、初デートの計画にそんなもんいらんだろ・・・そもそもお前、類似案件あんのか?」
「・・・ゲームの中でなら・・・」
「ぜったい類似してねぇから、それ・・・」
「ゲームの中では主人公の親友はヒロインの好感度を測れる仕様だったんだが。」
「俺にそんな便利な機能はねぇ。」
仕事と同じやり方はともかく、悶々と考えるよりは言葉にした方が良いかもしれない。
まずは行きたい場所、連れて行きたい場所を書き出してみるかな。
「どこ行くか決まったらレビューさせてくれ。じゃあな。」
成瀬はそういうと次の打ち合わせ場所へと向かった。
相変わらずスマートだ。諜報部員かのように必要なサポートを手短に済ませていく。
ーーー
「彼とはどうだい?」
昼下がり、客足が減ってきた店内で渋川は星奈に尋ねた。
「碧川さんですか?今度 2 人で出かけようと誘ってくれてますよ。」
「ふむ。必要なら影から監視するが?」
「いやいや、大丈夫ですよ!信頼できそうな人ですし。これでも人を見る目はあるんですよ。」
「ほう。告白を受け入れるのか?」
「いやぁ、どうでしょう。恋愛感情はまだわからないですけど・・・たまにはこういうのも良いかなって。」
「ずいぶん明るくなったな。良い傾向だ。」
「・・・そうですね。自分でも少し驚いています。」
品出しをしていた星奈の手が止まる。何か思い出しているのか、物憂げな表情だ。
「なんにせよ用心に越したことはない。そうだ、合図を決めておこうか。合図を出したのがわかれば 1km 先からでも狙撃可能だぞ。」
渋川の冗談なのか本気なのかわからない言葉に苦笑いをする。
ーーー
碧川は会社からの帰宅後、自宅でデートプランを書き出していた。ここ最近の日課である。
各スポットのメリデメ、星奈が興味抱かないリスクとその場合のコンチプランを書き出していた。
『今週末は流星群が観測される見込みです。日本でも天気が良ければ見えるかもしれません。』
テレビで週末の天気予報が流れる。
流星群か・・・初デートで流星まで見れたら最高だな。
携帯が鳴る。
もしや星奈さん?
期待して携帯を見ると妹からだった。
『極秘情報なんだけど・・・もうすぐ可愛い妹の誕生日らしい。』
・・・プレゼントの催促か。
デートプランのメリデメ表に「妹の誕生日プレゼント選び」を付け足した。
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