3
カーテンを閉め切って天井を見つめている。あの後、自分の部屋に戻って泥のように眠っていた。
暑さで目が覚めた。シャワーを浴びることすら放棄して寝たので、顔が脂でべたついている。
ベッドの上に手を伸ばして探る。エアコンのリモコンをつかんで頭上に向けた。
反応しない。上半身だけ起き上がり強くボタンを押す。壊れたかもしれない。
「マジか……」
電池が切れたか? 乾電池なんて常備していない。いや、していたかもしれないが、うずたかく物が積み重ねられた汚い部屋の中にあてもなかった。
「くそ……」
のろのろと起き上がる。外出する気力なんてないがこの気温の中で冷房なしで生活するのは不可能だ。散らかした物を踏まないようにベッドから脚を下ろして立ち上がる。時間は十時を過ぎた頃だった。
適当なジーンズを床から拾い上げて履く。干しっぱなしのTシャツをハンガーから取って着た。顔を洗って眼鏡をかける。変わらない陰気な顔つきと猫背がそこにある。
(俺は死ななかったのか)
憂鬱だ。スマホと鍵だけを適当にポケットに突っ込み、自分の視線から逃げるように鏡の前を後にする。
玄関に向かうと、ちょうどチャイムが鳴った。
宅配? 心当たりがない。ドアのすぐそばで身じろぎをした音が伝わったのか、向こうから反応がある。
「七尾くん?」
茉莉の声だった。
「え」
面食らってドアを開けた。
「なん……なんで……」
どもってしまった。確かに昨日部屋番号を教えた気がするが、できれば会いたくなかったので胸がざわついている。
相変わらず見透かされるような黒い目が苦手だった。
「ちゃんと生きてるかと思って」
「はあ……」
相変わらずそっけない言い方だがやはり心配されている。素直に受け取れないくらいにはこいつのことが得意ではない。
「きみ、ちょっと危なっかしくて気になるんだよね」
そういうところが嫌いなのだ。
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