あそびましょ。
――……
雪が降り始めたのだろうか。
『あそびましょー』
――
かわりに、あの日と同じ雪のにおいが
『わたしの名前はね、
懐かしい声だった。
また会いたいと願っていた声だった。
あの頃、
あの雪の日だって、誰も誘ってくれないから、ひとりで雪玉作って転がしたんだ。
誰も来ないのをいいことに、普段は入っちゃだめだと言われている裏山へ足を踏み入れた。
雪が、その境界線を覆っていたから。
誰も入ってこない裏山には、たくさんの雪が
歓迎されたのだと思った。あの日だけは。
だから、あの雪の日に遊んだ女の子のことを、
記憶の片隅に置きながらも、それはまるで夢であったかのように、ふわふわとして。もしも、誰かに話してしまったら、溶けて消えてしまう綿あめのようで。大切な思い出だったのに。
ふと、よみがえったのは、雪のせい?
ぱたぱたぱた と、足音が
流しの水は、流れている。母は、居間に背を向けたままだ。
換気扇がカタカタと回っている。ガスコンロでは、お煮しめの野菜たちが鍋の中でくつろいでいる。
騒がしいテレビは、歌番組に変わっていた。
おかっぱ頭の女の子が、
『名前、思い出してくれたのね!』
嬉しそうに、笑っている。
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