またね。

 その日、妙子たえこは、日が暮れるまで遊んだ。おかっぱ頭の女の子と一緒に。

 互いに初めて会ったはずなのに、以前から知り合いでいたかのように。一緒にいて楽しかった。

 たくさん笑った。

 たくさん駆けた。


 おかっぱ頭の女の子は、妙子たえこの好みをわかっていた。妙子たえこが喜ぶことを、妙子たえこがやりたいことを、言わないでも理解してくれた。


 妙子たえこはお昼ご飯を食べに一度家に戻ったはずなのに、そのあたりの記憶はあいまいだ。

 ただ、おかっぱ頭の女の子が、

『うん。待ってるよ』って、言ってくれたから。急いで家に帰って。

 それから、あわてて裏山に戻った。

 早く行かなくっちゃって、焦っていたのだけ、覚えている。


 その日は、おかっぱ頭の女の子と少しでも長く一緒に遊んでいたかったから。

 なぜだか、明日は、会えないような気がしていたから。


 だから、さよならのかわりに妙子たえこは訊いた。

「また、会える?」


 おかっぱ頭の女の子は、にこりと笑って答えた。

妙子たえこちゃんが望んだらね』


「うん。また、会いたい!」


 ふふふ、と笑った顔がかわいくて。妙子たえこはこの時気付かなかった。


 互いに名前を明かしていなかったことに。

 それなのに、おかっぱ頭の女の子はどうして、妙子たえこの名前を知っていたのだろう。

 誰かが呼ぶのを聞いたのかな。



『わたしの名前は……。覚えていてね、そうしたら、また会えるから』




 日が暮れて、また雪が降り出した。





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