やまないよ。

 妙子たえこの作った雪だるま。


 妙子たえこは、その大きさに満足した。

 目や鼻や口や手は未だ付けていないけど。

なかなか、いい出来ではないかと自画自賛して、眺めていた。


 じぃっと、雪だるまを眺めていると、なんだかしゃべって動き出しそうな気がして。

 妙子たえこは、思わず話しかけた。


「あそびましょー」


 歌うように。

 見えない雪だるまの手をとって、スキップもしてみた。長靴では少しもたついて、うまく跳べなかったけど。

 気持ちは、弾んでいた。


『あそびましょー』


 やまびこのように、声が返ってきた時、妙子たえこの額にはうっすらと汗が浮き出ていた。

 吐く息は白い。


 妙子たえこは、雪だるまの手を離し、声の主を探した。


 妙子たえこと同じおかっぱ頭の女の子が、妙子たえこを見て、にこりと笑う。

『あそびましょー』


 もう一度、聞こえた気がした。








 

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