降っても、振っても。

 あの日は、たくさん雪が降ったんだ。


 朝起きると、外は一面、真っ白で。朝陽の照り返しが眩しかった。


 幼かった妙子たえこは、まだ誰の足跡もついていない雪の中へ駆け出した。


――わたしが、一番!


 妙子たえこの付けた足跡だけが、そこにあった。


――こんなにもたくさん雪があったら、かまくらも作れるよね。


 あこがれのかまくら。

 雪がたくさん降らないと、雪がたくさん積もらないと作れないから。妙子たえこは、うれしかった。


 今日なら、できるかもしれない。

 そんな期待を胸に、一度帰宅し、手袋を取ってきた。


 雪玉を作って、雪の上を転がす。

 きゅっ、きゅっ、と雪をくっつけながら。 

 きゅっ、きゅっ、と雪玉は大きくなった。


 かまくらを作ろうと思ったのに、出来上がったのは、雪だるまだった。








 

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