神と魔王のこの異世界、俺だけ遭遇率がおかしいと思う。

@Ren-22

第一章 始まりの物語

第零話 プロローグ

ここは、冷たい風が吹きすさぶ山の頂上に建っている禍々しい城。大陸の北に位置する、魔王城。

 その城の中の最上階にある一室、“王の間”の最奥にある荘厳な玉座に一人の男が座っていた。

 その男は、たくましい体つきのやや長い深緑の髪、新緑の瞳、暗めの灰色のジャケットを羽織った男。

 突然ドアが開き、部下と思わしき男が入ってきて言った。


「先程、闇の精霊神の反応が確認されました。」

「ご苦労。」


 そう報告をした男は、静かに部屋を出ていった。

 そしてその男は足を組み、頬杖をついて言った。


「同胞たちが目覚め始めたか。

―――これは、面白くなりそうだな。」


 そう言うと、その男はゆっくりと玉座から立ち上がり、部屋の中央の絨毯を歩いてドアを開けて呟いた。


「遂に使うときが来たか。

―――異世界からの、来訪者を。」


 その後、男は部屋から出て、どこかへ行ってしまった。


◀ ◇ ▶


 とある街の酒場にて。

 荒くれ者が集まる広い酒場の一席に、黄緑色の髪の少女がいた。

 その少女は何かのジュースをぐいっと飲み、一息ついて天窓を見上げた。


「―――これは……何か起こりそうだね。」


◀ ◇ ▶


 孤島に建つ南の魔王城の、軍議の間。

 五体の人型の何かと、眩いばかりの光を発する球体がそこにいた。


「これより、我らはここより北東に位置する封印の洞窟付近を領地にするため、軍事行動に出る。

これは私の命令であり、友と交わした約束だ。

なんとしても制圧しろ。」


 光の球が言葉を発する。

 それに呼応するように、五体の生命体は頷き、各地に散らばっていった。


 「さあ、ヤミよ。

この状況からどう抗う。

私は決してお前だけは許さない。」


 一方、魔王城の外では、この不穏な流れを感じ取っていた者がいた。

 場内から飛び出す、赤、青、緑、茶、金の五色の光。

それを見て独り言を呟いた。


「コウのやつ、今度は何をするつもりだ?」


 呟いた者は、周辺の海一帯を支配する、大妖鮫メガロドンだった。

 その大妖鮫メガロドンは、光を目撃した後深海に潜りながら、心のなかで一つの結論を出した。


「ヤミ、無事でいてくれよ。」


 それは、友に告げる警告。


 この者達により、世界が大混乱に陥る少し前の出来事だった。

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2024年12月23日 16:00
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2024年12月25日 12:25

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