第2話

髪と躰を適当に拭いて、下着を着た後に、ジャージに着替えた。

特に誰に見られる訳でもないから、薄ら濡れた状態で、髪の毛を放置した。

傷んじゃうのは知ってるけど、別にもう髪の毛染める時にブリーチしたし、もう既に傷んでるからいっかって思いながら、特に見る訳でもないテレビをつけた。

テレビからは芸人の声がダダ漏れで聴こえる。別に興味無いからつけっぱなし。

はて、ゲームしようかな、あぁ、面倒くさいな。して、どうしたものか…

そう考えてる途中でふっと音が消えた。


「ねぇ、翠華。」

誰かの声がした。でもその声の主は覚えていない。

「翠華、忘れたのかい?俺だよ、俺。」

そんなことを言われても覚えてないものは覚えていない。

「あぁ、悲しいなぁ…昨日は俺の目の前で散々乱れてくれたのに…」

え、そんなことしたっけ?そんなふわふわとした感覚の中で、知らぬ男の声をずっと聞いて、少しだけ少しだけ、躰がまた火照った。火照った後にはっと何かに気づいた。でも、気づいたその時には、あの瞬間の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。

「なんだったんだろう、あー、でも下着…なんか、濡れてるかも…最悪。」

うちってそんなに欲求不満なのかな…なんて思いつつ下着を変えて、また宙吊りのかご型の椅子に座った。


「翠華、ねぇ翠華。どうして俺を忘れるの?」

その声が聞こえてはっと飛び起きた。え?今耳元に誰かいた?

「え…怖。」

声の主が分からない声がずっと耳元で聞こえる。何故だ?何故なのだ?ポンコツなうちの頭じゃ、到底分からない。

何か、夢を見ているようなそうじゃないような感覚がある。

なにか違和感を覚えて、スマホを取りだした。時刻は…あれ?なんでもう1時間もたってるの?

うちのスマホに住まうデジタル時計の不貞腐れた顔は、呆れた表情で11時を告げていた。

うちは、それを無視してスマホのロックを開いた。

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