はだしのルーシー 第3話

 次は靴屋だ。

 アリアは気合を入れる。

 靴屋に着く。

 呆気ない程すんなり、ピンクの靴を喜んで履く。

 ・・・結局その日だけ・・・

 最後に、食料品を多めに買う。

 あまり好き嫌いはない様だ。

 何が食べたいか聞くと、

「お肉~。」

 食後に、歯を磨いて二人で休む。

 寝相の洗礼第二弾が始まる・・・

    再会

 翌朝は騒々しく始まった。

 突然ドアの開く音、歩く音、ドアがノックされる。

「アリア、入るわよ。」

 こんなことが出来るのは、ただ一人。

 友達のマーサだけだ。

 あたしの家の結界はマーサだけは自由に入れるようにしてある。

 ドアが開く。

「アリア!負傷したって聞いたけど、大丈夫?って・・きゃああ!」

 眼を開けると、マーサが驚いた表情で、アリアの上の壁を見ている。

 見ると、ルーシーが仰向けで大の字でヤモリのように頭を下に向け、壁に張り付いて、くーくー寝ている。

 あ~あ~

「おはよう、久しぶりねマーサ。」

「おはよう・・何?この子大丈夫?あなたがやったの?」

「待って、濡れ衣よ、」

 ルーシーがアリアの上に落ちてくる。

「ぐえっ。」

 手短にルーシーの事を説明する。

「信じられないわね。」

「あたしもそう思う。」

 ルーシーが目覚める。

「おねえちゃんは、誰?」

「あんた、あたしと態度違わなくない?」

 マーサは、くすっと笑い。

「こんにちわ、私はマーサ、アリアの友達よ。」

「こんにちわ、あたしルーシー。

 世界を旅してるの。」

 その後、3人で朝食を食べる。

「それで、ダンジョンに向かう間、この子はどうするの?」

「それなのよね、今日孤児院に行って神父様に相談してみようと思う。」

「私は、一度神殿に行ってから宿舎に行って荷物を取ってくるから、しばらく

ここに泊めてもらってもいいかしら。」

「いいわよ。」

 3人で教団本部に向かう。

 ちなみにマーサは冒険者兼神官で宿舎に住む。

 アリアの家が気に入って、主にお風呂だが、よく泊まりに来る。

 アルは冒険者兼教会騎士なので、騎士団の寮に住んでいる。

 途中で買い物をして、孤児院の所でマーサと一旦別れ、ルーシーと中に入る。

「あっアリアお姉ちゃんが来た。」

「この子は誰?新しい子?」

 子供が集まってくる。

 ルーシーはアリアの後ろに隠れる。

「はい、クッキーを買ってきたの。

 皆で食べてね。

 あたしは、神父様とお話があるからこの子を見ていてくれる?」

「うん、行こお。」

 年長の子が、ルーシーの手を取って連れて行く。

 ルーシーはおずおずとついて行った。

 神父様の部屋に行く。

 自分が出かけている間、ルーシーを見ていて欲しいとお願いをする。

 神父様は快諾するものの、もう聖女候補なのだから冒険者などやめて云々

と、段々お説教じみた話になって来た為、慌てて退散することにする。

 子供のいる部屋に戻るとルーシーは、子供達の輪に入って打ち解けて、遊んでいるようだ。

 アリアを見つけ、近寄ってくる。

「まだ遊んでてもいいのよ。」

「ううん、アリアと行く。」

 アリアと手をつなぎ、皆とさよならをして、孤児院を出る二人。

 丁度入り口で、マーサと出会う。

 三人で手をつなぎ、お昼をしながら買い物をして家に帰る。

 夕食後、マーサは歯を磨いているルーシーに、

「今日はお姉ちゃんと一緒に寝ようか?」

「うん、い~よ。」

 マーサが来た時用の寝室に二人で入る。

 その晩、

「キャッ、」

「ひっ。」

 マーサの短い悲鳴が聞こえたそうな・・

 今日は、マーサに合掌・・。

     再会2

 翌朝、久しぶりにぐっすり眠れたアリアと、寝不足のマーサは、朝食を食べて

ギルドに向かう。

 古参の冒険者が近づいてきた。

「よう、お二人さん、レムスとアルはギルマスの部屋に行ったぜ。

 いよいよ、パーティー再結成だな。

 頼りにしてるぜ。」

「あまり、喜んでばかりいる状況でもないけどね。」

「そうでもないさ、俺達には心強いさ。

 そういやあ、そこの可愛い冒険者は助っ人かい?

 この間も連れてきてただろ。」

「やめてよ、この子が本気にしたらどうするの。」

「ルーシーは助っ人冒険者。」

 アリアは頭を抱える。

 取り敢えず、ギルマスの部屋に行く。

「久しぶりね、レムス、アル。」

「よう、久しぶりだなお二人さん。」

 レムスが答えアルが頷く。

「積もる話は後で、酒場ででもしてくれ。

 現状は更に悪化している。

 まず北の山にダンジョンが出来たのは間違いないらしい。

 魔物の動きが、活発になってきているらしいからな。

 只、魔族軍の方は鳴りを潜めているらしいがな。

 村の騎士団で今の所は対応できているらしいが、この先は分からん。

 次は、各国のダンジョンで、同時に「魔王」が発生したらしい。

 各国のギルドはてんやわんやさ。

 つまり、全く人手が足らない。

 では、大司教の正式な依頼を伝える。

 一週間後、騎士団を送り込む。

 それまでに、ダンジョンに行く準備を整えて一緒に出発。

 騎士団は魔族軍の対応とダンジョン入り口の防御、

 レムス達はダンジョン攻略と、出来る事ならダンジョンの封印までをしてほしいとの依頼だ。

 増員は任せる。

 ではよろしく頼む。

「ねえ、ルーシーは?」

「あなたはその間、孤児院に預けようと思ってる。」

「いやだ~、ルーシーも行く~助っ人冒険者するの~。」

 ギルマスは、

「いいか?おチビちゃん、冒険者は遊びじゃあない。

 実力者が試験を受けてなるもんだ。」

「試験?面白そ~、ドラゴンやっける?」

「ははっ、ドラゴン倒せたら即合格だがな、ちょっと待ちな・・ほらよ、」

 ギルマスは、ルーシーに試験の資格にサインして渡す。

「ちょっとギルマス、あんた大人げないわよ。」

 アリアが食って掛かる。

「いいじゃないか、実際、薬草採取でもしてくれたら、こちらも助かる。」

「それで済む話ならね。」

 ルーシーが先頭でトコトコ歩き4人がぞろぞろ後を付いてゆく。

 レムスが、アリアに、

「なあ、黙って聞いていたらこれってあの子が俺たちのパーティーに加わって、ダンジョンに行くって話なのか?」

「結果的にはそうなるわね。」

「冗談じゃあ無い。魔王がいるダンジョンに子守しながら行けってのか?」

 アルが頷く。

「あたしが心配してるのは別の意味だけどね。」

 今度は、マーサが頷く。

 余程、昨晩はひどい目にあったようだ。

    試験

 受付に着く。

 受付嬢のカレンが、

「可愛いお嬢ちゃん、どうしたの?」

「あたしルーシー、試験を受けに来たの。

 はい。」

「・・・冒険者試験許可、・・・ダンジョンアタック試験許可・・・

 ギルマスは一体何考えてるの?

「ねえ、まだ~?」

「・・・わかりました。

 試験官はレムスさんになっています。

 レムスさん?」

「俺?ギルマスめ、あの野郎俺に押し付けやがったな・・

 まあいい、ついてきな。」

 今度はレムスが先頭で次にルーシー、その後を3人でゾロついて行く。

 レムスが考えていることは分かる。

 驚かせてあきらめさせるつもりなのだろう。

 しかし・・・

 ギルド裏手の訓練所に着く。

 鍛錬所に入る二人。

 野次馬がぞろぞろ集まってくる。

「レムスじゃないか?帰って来たのか。」

「あのちびっこは何だ?」

 レムスは木剣を取る。

「じゃあ始めるか、お前魔法使いか?

 どこからでもいいからかかってきな。」

「ルーシーは武士だよ、ほら。」

 ルーシー、ワンピースをぺローンとめくる。

「くおら~!女の子がそんなことしちゃあダメよ!」

「ハハハっ、確かに武士だ。

 だが、刀はどうした?刀が無いと武士とはいえんぞ。」

 その時、ルーシーの影が広がる。

「星空?」

 影が戻った時、ルーシーの手にいつの間にか、木刀が握られている。

 いつの間に?それにこの剣気?意外と・・・

 レムスの顔色が変わり、真面目な顔になる。

 やかましかった野次馬が口をつぐむ。

 何か感じたのだろうか?

「それじゃあいくよ~!

 柳生新陰流、奥義ルーシー剣、た~!」

「ボカン」

「いてっ」

 突然、頭を叩かれキョロキョロするレムス。

 ルーシーは、どや顔だ。

「と~っ」

「ドカッ」

「いてっ」

 今度は背中を叩かれる。

「ど~だ、必ずどっかに当たるのがルーシー剣だよ。」

「な、なんてインチキな・・」

「た~、と~っや~。」

「いてっいてっいたっ!」

 段々ボコボコにされていくレムス。

「や~ッ」

 少し遅れて、トライアングルの音が鳴る。

「チーンッ」

「あっボーナスポイント~、」

「はうっ」

 股間を押さえて倒れるレムス。

「な、なんて恐ろしい・・」

 野次馬達と、アルが呟く。

「これで合格~?」

 いつの間にかアリアの隣にギルマスがいる。

「まだまだーっ」

「あんた大人げないね」

 アリアが呟く。

     試験その2

 次は、遠距離攻撃だ、あそことあそこの2つの的に攻撃を当ててみろ。

 ルーシーの右眼から二つの紅い光が伸びる。

「距離50メートルと125メートル。

 キーちゃん対戦車ミサイル頂戴、弾頭HESH、ファイア~。」

 ルーシーから星空が広がると、30センチほどの円筒が二つ回転しながら飛び出す。

 片側から火を噴いて的めがけて真っすぐ飛んでいき、ほぼ同時に爆発が起きる。

 啞然とする皆・・

「命中~

 これで合格?」

「まっまだまだ~」

「ギルマス、大人げないわ。」

 今度は、マーサが呟く。

     試験その3

「じゃあ、最後の試験だ。

 お前、ドラゴン退治と言ったな。

 お望みどおり、ドラゴン退治だ。

 ただし、ここにドラゴンを連れて来い。

 出来ないだろ、はっはっはっ」

「ギルマス、大人げない。」

 アルも呟く。

「ケロちゃん、ティーレックスになって~」

 ルーシーのポケットから、銀色のカエルが飛び出すと、形が崩れる。

 マグマが噴き出すようにボコボコッと瞬く間に小山になり頭部の大きい、見た事のない、ドラゴンになる。

「ルーシーの世界にいた大昔の恐竜だよ~」

 野次馬が逃げ出す。

 ギルマスは目を見開きながらも逃げない。

 アリアがため息をついて、腕を組んで立っているので、マーサとアルも、危険ではないと判断したのかそのまま眺めている。

 ルーシーが親指と人差し指を立てて、

「バーン」

 と言うと、ケロちゃんが倒れて、死んだふりをする。

 ルーシーが振り向き、ケロちゃんも頭を持ち上げギルマスを見て、

「どお?」

 ギルマスが、はっと我に返り、

「まっま・・」

「もうやめときな、ギルマス、ドラゴン出した時点でもう試験の意味ないよ・・

 分かった分かった、連れてきゃあいいんでしょ。」

「やったー!」

「やれやれ」

 騎士団がやってきた。

 ドラゴンの目撃情報と原因不明の爆発の調査で、ギルマスが、連行されていく。

 恨めしそうにこちらを見る。

 知らんがな、そんなもん。

 取り敢えず折角メンバーがそろったので酒場に再開を祝いに行く。

 レムスはアルが担いでいる。

     星空

 酒場で、皆席に座る。

 レムスは、マーサの治癒魔法で、復活している。

 「じゃあ、再開を祝って、それと新メンバーの歓迎会も兼ねて、かんぱーい。」

 酒は、レムスとあたしのみ。

 アルは下戸、マーサは公共の場では禁止されていて、ルーシーは当たり前。

 三人はジュースだ。

 「先に言っておこう、明日から全員で準備にかかる。

 魔王が発生しているダンジョンは通常ならば30階層程になるだろう。

 いつもより、長丁場になる可能性がある為、装備は厳選する必要がある。

 意見を聞きたいので準備してもらった教団前の馬車に朝集まってくれ。

 以上終わり。

 さあ、飲もうぜ、」

 料理が続々来る。

「しかしルーシー、お前が持っている木刀と言い、技はとんでもないから置いといても、その構えや剣の筋は確かに東の国の、それもかなりの腕とみる。

 一体どこで覚えたんだ。

「侍の、とおちゃんに教えてもらった。東の国は知らな~い。」

 アリアは、改めて、ルーシーと出会ってからの事をみんなに話す。

「異世界から来たってのか?」

「あたしもまだ信じられないけど、そうとしか思えないわ。」

「星空・・どこかで聞いたことあるんだよな~」

「まあいいか、お互い土産話は山ほどあるんだ。」

 夜も更け、だいぶ二人も、酔いが回り、

 レムスが、ふと

「ああ、思い出した。

 魔の国の酒場で、吟遊詩人が歌っていた。

 大魔王アリウスと邪神のお姫様の物語。

 確か歌い出しがこうだった。

 その少女は、星空と共にやって来た、だ。・・」

やがて、今日はお開きとなり、レムスはアルスを担いで帰り、寝ているルーシーをマーサが背負っている。

 アリアは、酔ってはいたがレムスの呟きで、一気に酔いが醒めた。

 星空を操る邪神のお姫様・・

 この中で神託を知っているのはあたしだけ・・

「まさかね。」

 それより大事な問題がある。

 今日はどっちがルーシーと寝るのだろう。

 こちらの方が問題のような気がする・・・。




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る