色づく世界

夜宵 恋兎音

第1話 久しぶり、だね。

毎日世界が霞んで見えてた。だけど君を見たら周りがぶわぁってなって、キラキラが広がって、全てが変わり始めた。


_あれ、今日はいる。

そう思ったのと同時に今日はいるその子を見て心臓が口から飛び出そうなほど嬉しくなった。

季節は11月。秋も終わり冬が始まろうとしてる今日、君は約3ヶ月ぶりに学校に顔を出す。

夏休みが明けたとき、君は学校に来なかった。最初は体調不良だと思って心配していたけど、何日も来ないから、今度は学校に来れないなにかがあるのかと心配になった。連絡しようにも、連絡手段どころか名前もわからない、話したこともない関係だった。でも、何ヶ月も学校に来ない君が本当に心配だった。だけど、今日、なぜだかわからないけど君は学校に、ここにいる。

何かあったのかな、嫌なことでもあったのかな、行きたくない理由は何だった?とても心配だったんだよ。私でよかったら話いつでも聞くよ。言いたいことはたくさんあったけれど、それよりも嬉しいが勝ってしまう。何ヶ月ぶりに君を見ることができて心が弾む。

久しぶりに学校に来たら、やっぱ、誰かから話しかけられたら嬉しいはず。そう思って私は今_サラサラな黒髪でキレイな二重でパッチリした目をしてるそんな君に、話しかける。

「ちりとり、やるよ」

「…ありがとう」

その一言だけで私の目にはたくさんのフィルターがかかったかのような衝撃が走る。世界が少し前よりきれいに見えた。

「…………」

「…………」

そこから会話をすることはなくゴミを集め終わりそうになってしまう。

………なにか、話さなくちゃ。…でも、何を?

私達の通うここ、星宮公立高校の図書委員は全委員会の中で唯一1年を通して同じ人が担当することになっている。そして、図書委員の1年生は1年間図書館掃除を行う。君が学校に来なくなる前の夏休み以前も1回も話したことがなかった。そんな中、何を話せばいいのだろう。

_でも、あの時みたいに後悔はしたくない。ぐっとちりとりを握って深呼吸をし、思い切って話を切り出す。

「学校来るの久しぶりだね」

「……うん」

「元気だった?」

「…………うん」

「そっか、よかったね」

君と初めてする会話は声が震えてて、心臓がバクバクで。そんな、ぎこちない会話だった。

「久しぶりだね」

「…うん」

君は最後まで「うん」としか返してくれなかったし、同じことを繰り返して言ってしまったけど、それでも君は笑顔で返事をしてくれるから凄く嬉しかった。話しかけてくれる良かったと心から思った。君がまた、学校に来なくならないように私は掃除中だけでも君にたくさん話しかけて、仲良くなれたらいい。そう思った。

そしてそれから1週間、掃除中には話しかけその日あったことを一言二言話すようになった。

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