第2話
空が真っ暗?
今は昼のはずなのに、なんで?
世界の
やっぱりおかしい。
カラカラ……
コンクリートの破片が上から転がってくる。
ふと建物の様子を見ると、倒壊はしていないが、今にも崩れそうだ。
えぇ……。
ちょっと不味いかもね。
倒壊に巻き込まれたくない。
さっさと逃げるに限るかぁ。
考えると同時に、私はすぐに行動に移した。
正面にいた女子二人組は先程の急の衝撃によって頭を打って気絶している。
いくら性的な目で見られようと、一応は助けてあげよう。
ここには私と正面の二人のみしか人はいなさそうだからトンズラしちゃって大丈夫かな?
ファンタジーで最初に観測した仮称『魔力』を用いて身体を強化する。
感覚としては体中の細胞に酸素を届ける感じ。
身体強化については昔、妹に借りたラノベにあったからそれを参考にして自分で再現してみた。
結構便利だから皆もやってみよー。
二人を両脇に抱えて空に向かって跳ぶ。
高さとしては30メートルほど。
通常時なら不可能だけど、身体強化をすることによって可能になる。
ぴょん、ぴょん、ぴょーんってね。
飛び越えたところで建物が崩れ始めた。
誰か残っていないよね、と周囲の『魔力』を使って調べてみると、誰もいない。
よかったー、って。
思っていた時期が私にもありました。
文字通り、周りに私と女子二人をのぞいて誰もいない。
昼であるはずの空は暗黒で恐怖を引き立てる。
「怖いよぉー(棒)」
周囲に誰もいないのは流石に異常。
身体強化をしたままで周りを駆け回ってみる。
「いない」
学校っぽい建物の中に入る。
「いない」
誰かも知らない家の中を覗く。
「いない」
……え、人口の99%がいなくなったってちょっとそれはおかしすぎるよ。
一応ここの場所首都だよ?
流石に人口が減っても人はいるとは思うんだけど。
―――8962人。
えぇ……。
そんなにいないけど…?
半径1キロメートルの魔力を探知してみるが、たったの3人。
どちらも世界への干渉や魔力の妨害がない限り情報の正確さは100%。
どちらも妨害を受けた場合はすぐに分かる。
なのに、一人たりとも見つからない。
流石におかしい。
やっぱりあのベルの音と、空の暗黒が関係あるのかもしれない。
元の場所に戻ると、女子二人はしっかり目を覚ましていた。
「あ、可愛い子ちゃんだ」
「……やっぱり食べたい」
うーん。
命の恩人に対してそれはちょっと……。
と思うが、精神的にやられてしまったと考えても良い。
そもそも私が運んだことも知らないだろうし仕方がないか。
見た目としては無口気味な小さな子と、元気そうなちょっと大きい子の二人組だね。
色々と話すことも多いかもしれないけど……。
まあ、一旦これからのことについて話そうかな?
ヒューーー〜〜………―――。
また音?
なにかが打ち上がっている…?
―――ドォォン。
音のなる方へと振り向くと…。
巨大な花火が暗黒に染まった空を鮮やかな色で塗替えしながら開いていた。
「綺麗……」
そう呟かずにはいられないほどの見事な朱色の花火だった。
――その刹那、私達の周りの景色が入れ替わる。
「ちょ、まず……」
強制転移……!!
転移型の能力は触れている生物とその生物が触れているものしか転移できないようになっている。
勿論、大きさに限度はあるから、地球が運ばれることはない。
花火に気を取られて注意を怠っていたよ……!!
女子二人に触れようと跳んだ………が、間に合わず、スッテンと転んだ状態になってしまった。
「いてて」
膝を擦りむいたかも…。
ん?
布?
「………え?」
なんで着物に…?
しかも女物のやつ。
私は男だった気がするんだけど…。
立ち上がって、砂埃をパッパッとはらいながら、自分の体を確認する。
……胸の膨らみがありますねぇ。
……ついでにブツもないですねぇ。
うーんこれは。
「女の子になっちゃったかぁ…」
そういえば声の高さも高くなってる…。
世界を再誕するのに性別は関係ないから良いけど、これから起こるだろう戦闘とかは、慣れない体だから不味いかもね。
でもまずはあの二人を見つけないと…。
二人が能力者なのかどうかは知る由もないけれど、この領域……というより一種の亜空間を作り出した主が不明な以上、とりあえずは大人数で行動をしたほうが良い気がする。
周りの景色を見渡すと、辺り一帯に提灯がぶら下がり、美味しそうな匂いや、楽しそうな雰囲気が辺りに漂っていた。
仲が良さそうなカップルらしき男女も、きれいなお姉さんから焼きそばを買っている親子も、この空間で楽しんでいた。
これは……夏祭り、だよね。
探すついでに買い食いしたいなぁ……なんて。
お金ないからそんな屋台で買い物なんてできないけどね。
そもそも、ここの屋台だって恐らく能力で作られたものでしかないから実物でもないと思うけど。
―――ねえ、君、この串焼きをあげるよ。
ん?串焼きくれるの?
やったー。
はむはむ。
うまうま。
お金は……?
―――必要ないよ
あっ、いいのね。
ありがとね~。
「ふぅ、美味しかった」
ん?
あそこにいるのはさっき見た女子二人組のちっちゃい方じゃない?
「おーい、私はこっちだよ〜」
手を振るがあちらは気がついていないのか、こちらに見向きもしない。
さっさと走って合流しよっと。
速やかに走る……。
……が、次の瞬間には消えていた。
「えぇ…なんでぇ」
それは無いって…。
この亜空間の創造主が誰かなんてわからないが、合流ぐらいさせてくれないのかな。
先程から探知できるんだからそれ使えよとか言われそうだけど、この空間は『魔力』に満ちていないんだよ。
『魔力』がない以上、探知をすることなんてできないんだよね。
世界の
「もーーーーめんどくさい」
―――美味しい綿あめ、どうぞ。
ん?この綿あめくれるの?
ありがとーね。
「綿あめは良いけどさぁ……」
甘っ。
「あの二人はどこなんだろほんとに」
―――このお面、いかがですか?
お面くれるの?
てんきゅー。
お狐様、こんこん。
「先にこの亜空間の主を探しに行くべきかも」
―――おーい!水風船はどうだい?
水風船?
おー。
なんか懐かしい。
輪ゴムの所に指をはめて伸ばして掴むを繰り返していた記憶。
「ここの人たちに聞くべきかな」
あっ、あそこの焼きそば屋に聞けばいいかな?
「ってあれ?」
この人、二人組の大きい方じゃん。
「おーい!!」
「げ………」
私の顔を見るなり逃げ出したんだけど!?
私の顔ってそんな悪いかな……。
鏡とか持ってないから知りようがないけど。
とりあえず、ひどい顔でないことを祈っておく。
ま、転移はされていないみたいだから何か転移の条件があるのかな?
今は魔力を使えないから自らの身体能力で追いつかなければいけないけど………。
無理☆
身体能力そのものが落ちた気がするからね。
追いつけないです。
「はぁ、はぁ……」
……やっぱり無理だった。
あの子、能力者だ。
いくらなんでもあの速さは能力を使わないと説明できない。
不可解な動きもしてたし。
でも、この空間を作った能力者じゃないっぽい。
だとしたら……。
―――そこの嬢ちゃん、金魚すくいをやらないかい?
え?金魚すくい?
ちょっと今は急いでいるから……。
―――ちょっとでいいから。どう?
えぇ…、どうしても?
ま、まあちょっとだけなら………。
ちょっとだけ大きなあの子が欲しい!!
ちょっ、逃げ、破れそ、あと……ちょっとー!?
……結局一匹も取れませんでした。
おじさんが欲しかった一匹を水と一緒に袋に入れてくれたから良かった良かった。
………ってぇ!!
なに集中して金魚すくいしちゃってるの!?
あっ、そうだ。
ここの亜空間について聞かないと…!!
「あのっ」
―――そこの嬢ちゃん、金魚すくいをやらないかい?
………え?
いやいやおかしい。
あのおじさん、さっきも私と話したよね。
なんで一字一句同じことを話すの?
―――ちょっとでいいから。どう?
あー、なるほど。
この人、この亜空間で生成された
結構すごい能力だなこれ。
これでいままでの能力が別だったら知らないけど、転移能力+亜空間生成+疑似生命創造かぁ。
結構万能能力ではあると思う。
もしかしたらまだ知らない能力があるかもしれないけど。
「ごめんなさいねー」
金魚のおじさんに気持ちだけでも謝りつつ、女子二人の小さい方を探す。
なぜ小さい方を探すかって?
それはあの子が最もこの空間を作り出した可能性が高いからね。
===
12/27:前話の怪物が生まれる原因を『悪意』→『ネガティブ』に変更しました。
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