第17話 すべてお任せください

ダンジョンから戻り、ギルドの報酬を受け取った後、俺たちは街の鍛冶屋へ向かった。初めての冒険で得た素材をどうするか考えていると、リュシアがふわりと微笑みながら提案してくれた。


「ご主人様、今回の冒険で手に入れた素材を使い、武器を強化してはいかがでしょうか? 次の挑戦がより安全になります。」


「確かにそうだな。でも、鍛冶屋とか全然分からないんだよな……どうすればいい?」


「ご安心ください。私がすべてお手伝いいたしますので、ご主人様はどうぞお任せください。」


その言葉に甘えて、俺はリュシアと一緒に鍛冶屋へ向かうことにした。街の中心から少し外れた場所にある鍛冶屋は、力強い金属音と熱気が漂っている。


鍛冶屋の主人は頑丈な体格の中年男性で、こちらを見ると大きな声で挨拶をしてきた。


「おう! 新顔かい? 武器でも防具でも、どんなもんでも任せてくれ!」


「お世話になります。」リュシアが丁寧に一礼をして、俺の代わりに話を進める。「こちらの素材を使用して、武器の強化をお願いできますでしょうか?」


リュシアが手際よくバッグから取り出したのは、ダンジョンで得た黒光りする鉱石や、モンスターから採取した鋭い爪のような素材だった。それらを鍛冶屋に渡しながら、リュシアは詳細な説明を加えていく。


「この鉱石は、剣の刃を強化するのに適しているかと思います。また、この素材は耐久性を高める効果が期待できるかと。」


「ほう……この素材、なかなかいいモンじゃねえか。あんた、目が利くな!」


鍛冶屋の主人が感心した様子で頷き、すぐに作業に取りかかる準備を始めた。その間もリュシアは、適切な追加オプションや、予算についての交渉を完璧にこなしている。


俺はその様子を見ながら、ただ感心するばかりだった。


「リュシア、なんか全部お前がやってくれてるな……俺、何もしてないんだけど。」


「ご主人様、それでよろしいのです。すべてお任せください。」


リュシアが振り返って穏やかに微笑む。その言葉に逆らう気力もなく、俺はベンチに腰を下ろして待つことにした。


しばらくして、鍛冶屋の主人が満足げな顔で仕上がった剣を持ってきた。元々の剣とは比べ物にならないほど光沢があり、鋭い刃が一目で強化されていることを示していた。


「完成だ! どうだい、見違えるようになっただろう?」


リュシアがその剣を受け取り、細かくチェックした後、俺の手にそっと渡してくれる。


「ご主人様、とても素晴らしい出来栄えですね。ぜひお試しください。」


俺は新しい剣を手にし、その軽さとバランスの良さに驚いた。振りかざしてみると、以前の剣よりもはるかに扱いやすくなっている。


「すごいな……これが俺の剣か。」


「はい、ご主人様。これで次の冒険もより快適に進められることでしょう。」


リュシアの言葉に、俺は思わず笑みを浮かべた。


「お前のおかげだよ、リュシア。全部任せっきりで悪いな。」


「とんでもございません。ご主人様が安心して冒険に集中できるようお支えするのが、私の務めですから。」


リュシアの言葉に胸が温かくなり、鍛冶屋を後にする頃には、次の冒険への期待がさらに膨らんでいた。新しい剣を手にした俺は、リュシアの完璧なサポートを受けて、また一歩強くなった気がした。

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