第15話 素晴らしいです、ご主人様!

ダンジョンの入り口を進むと、すぐに薄暗い林の中に入り込んだ。木々のざわめきが風に乗って耳に届き、辺りには湿った土の匂いが漂っている。最初のダンジョンと聞いていたが、この雰囲気だけで少し緊張してしまう。


「リュシア、大丈夫か?」


「はい、ご主人様。私はいつでも準備万端です。ご主人様こそ、何かあればすぐにお申し付けくださいね。」


リュシアはいつも通りの穏やかな微笑みを浮かべながら俺の隣を歩いている。その姿を見るだけで、少しだけ気持ちが落ち着く。


「ありがとう、リュシア。お前がいるから安心できるよ。」


俺たちは注意深く足を進めていった。やがて、茂みの奥から微かな物音が聞こえる。俺は足を止め、緊張感が一気に高まる。


「リュシア、何かいるみたいだ。」


「はい、ご主人様。小型のモンスターがこちらに向かってきています。おそらくスライムでしょう。」


リュシアの冷静な声に、俺も少しだけ落ち着きを取り戻す。しばらくすると、茂みの中からスライムが姿を現した。半透明な体がぷるぷると震えながらこちらに向かってくる。


「どうする? 俺が先に攻撃するのか?」


「ご主人様、その通りです。まずは一撃を加えて、モンスターの反応を見てください。私がすぐにサポートいたします。」


リュシアの指示に従い、俺は腰に携えた剣を引き抜く。これが初めての戦闘になる。緊張を抑えながら剣を構え、スライムとの間合いを詰める。


「よし、いくぞ!」


声を出して気合を入れながら剣を振り下ろす。スライムの弾力ある体に剣が食い込み、反撃の隙を与えずに一撃を加えることに成功した。


「見事です、ご主人様! あの調子で、スライムの核を狙ってください!」


リュシアの声が背中を押す。俺はそのまま再び剣を振り上げ、スライムの中心部にある核を狙った。剣が核に命中すると、スライムは動きを止め、そのまま消えていく。


「やったか……?」


「素晴らしいです、ご主人様! これほど完璧な動きをされるなんて、さすがです!」


リュシアが拍手をしながら俺の元に駆け寄ってくる。その表情は心からの称賛に満ちていた。


「いや、そんな大したことじゃないよ。お前が隣でサポートしてくれたおかげだ。」


「いえ、ご主人様のお力があってこそです。私など、ほんの少しお手伝いさせていただいただけです。」


リュシアの柔らかな笑顔に、自然と顔が緩む。初めての戦闘を終えた達成感と、彼女に褒められた喜びが混ざり合い、胸が温かくなった。


「ありがとう、リュシア。これなら、これからの戦いもやれそうな気がするよ。」


「その通りです、ご主人様。私はこれからも全力でお支えいたしますので、ご安心ください。」


その言葉に力をもらいながら、俺たちは再び足を進めた。ダンジョンの奥にはまだ何が待ち受けているか分からないが、リュシアがそばにいる限り、俺はやれる気がしていた。

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