第14話 今日はギルドでの初依頼ですね

朝日が部屋の窓から差し込む。柔らかな光が俺たちの寝室を照らし始めると同時に、俺はゆっくりと目を覚ました。隣では、リュシアがいつもと変わらない穏やかな表情で目を開ける。


「おはようございます、ご主人様。」


リュシアの声は朝の静けさに溶け込むように柔らかく、まるで心を洗うようだった。


「ああ、おはよう。よく眠れたよ、リュシア。」


そう返しながら、俺はベッドから体を起こす。リュシアもすぐに動き始め、俺のそばに立つ。


「今日はギルドでの初依頼ですね。ご準備をお手伝いいたします。」


その言葉に、俺は少し身を引き締める。リュシアが準備を完璧に整えてくれるとはいえ、初めての依頼に少しだけ緊張していた。


「助かるよ。まずは着替えだな。」


リュシアは小さく頷くと、俺の着替えを手に取る。俺が身につける前に、一つ一つの服を整えて手渡してくれる。その仕草があまりにも自然で、思わず照れくさくなる。


「今日は動きやすい服装をおすすめします。ダンジョンでは足場が不安定な場合もございますので。」


「なるほどな。じゃあ、この装備でいこう。」


俺が服を身につける間、リュシアは俺の背後に立って軽くほこりを払ったり、服の位置を整えたりしてくれる。その気遣いがありがたくもあり、どこか恥ずかしくもあった。


「ご主人様、とてもお似合いです。」


さらりとそんなことを言われ、俺は照れ隠しに軽く咳払いをする。


リュシアは自分の服装を整え始める。その動きは滑らかで、無駄がない。黒と白を基調としたメイド服が、彼女の整った顔立ちと柔らかな雰囲気によく似合っていた。


準備を終えた俺たちは、早速ギルドへ向かうことにした。街はまだ朝の静けさに包まれており、通りにはちらほらと人影が見えるだけだった。そんな中、リュシアは俺の隣を歩きながら、次の言葉を投げかけてくる。


「ご主人様、初めての依頼とあって、少し緊張されているかもしれませんが、どうぞ安心してください。私が全力でお支えいたします。」


「そう言ってもらえると心強いよ。」


俺たちがギルドの扉をくぐると、中はすでに活気づいていた。冒険者たちが依頼を選び、受付で手続きをしている。その光景を見て、俺も少しだけ冒険者としての実感が湧いてきた。


リュシアが先に受付へ向かい、受付嬢と軽く挨拶を交わす。俺も後に続き、用件を伝えた。


「初めての依頼を受けたいんですが、何か適したものはありますか?」


受付嬢はにこやかに頷きながら、掲示板からいくつかの依頼書を取り出して見せてくれる。


「初心者向けのダンジョン探索依頼がありますよ。『森の入り口』と呼ばれる小規模なダンジョンです。モンスターも比較的弱いものが中心ですので、最初の挑戦に最適かと思います。」


俺が依頼書を受け取り、内容を確認している間、リュシアがそっと耳打ちしてくる。


「ご主人様、こちらの依頼は探索範囲も狭く、危険性は低めです。ただ、油断せずに挑まれるのが良いかと存じます。」


「そうだな、これにしよう。」


受付嬢に依頼を引き受けることを伝え、手続きを終えた俺たちは、再び街を歩きながらダンジョンの準備を始める。リュシアは必要なアイテムをすでにリストアップしており、手際よく購入を進めていく。


「ご主人様、水と簡単に摂れる栄養食を用意しました。これで道中のエネルギー補給も問題ございません。」


「お前、本当に完璧だな。助かるよ。」


「ありがとうございます。それが私の務めですから。」


リュシアの用意した装備とアイテムを手にし、俺たちは『森の入り口』へ向かった。街の喧騒が徐々に遠ざかり、静かな林道へと足を踏み入れる。道中もリュシアは、注意深く周囲を観察し、俺の安全を確認してくれていた。


「さあ、ご主人様。いよいよ冒険の始まりです。」


リュシアの柔らかな声に背中を押され、俺はダンジョンの入り口に足を踏み入れた。初めての冒険――それがどんなものになるのか、期待と少しの緊張が入り混じる瞬間だった。

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