第5話 よし、行こう。準備はできてる
影森のさらに奥に進んだ俺たちは、ますます厳しい環境の中に足を踏み入れていた。薄暗い空間に加え、霧のような湿気が漂い、視界が悪化している。足元にはぬかるんだ泥が広がり、油断すると滑りそうだ。
「ご主人様、ここから先はさらに危険です。慎重に進みましょう。」
リュシアの声が頼もしく響く。彼女の存在がなければ、この先に進む勇気は到底持てなかっただろう。俺は頷きながら、霧の中に目を凝らした。
「この層には何があるんだ? 他の鉱石か?」
「はい、ご主人様。この層には特に貴重な鉱石である『輝晶石』が存在します。しかし、それを守るモンスターも非常に強力です。」
「輝晶石か……名前からして価値がありそうだな。でも、そんな簡単にはいかないだろう。」
「その通りです。輝晶石を採取するには、守護モンスターを倒す必要があります。それに、この層では罠が仕掛けられている可能性もありますので、注意が必要です。」
罠という言葉に背筋が冷たくなる。モンスターだけでも厄介なのに、罠まであるとなると気が抜けない。俺は武器を握り直し、一歩一歩慎重に進む。
しばらく歩くと、遠くに微かな光が見えた。霧の中でもぼんやりと輝くその光は、輝晶石の可能性が高い。しかし、近づくにつれて異様な気配が強まってきた。
「リュシア、あの光が輝晶石か?」
「はい、間違いありません。しかし、その周囲に強い魔力の気配を感じます。おそらく守護モンスターが潜んでいるのでしょう。」
「わかった。近づく前に作戦を立てよう。」
リュシアは頷き、静かに提案を始めた。
「守護モンスターは通常、一撃で仕留めることが難しい耐久力を持っています。そのため、まずは相手の攻撃パターンを見極め、隙を狙う形が有効です。」
「そうか……でも、もし複数のモンスターが出てきたらどうする?」
「その場合、私が一部を引きつけます。ご主人様は一体ずつ確実に対処してください。」
彼女の冷静な分析に感謝しつつ、俺は深呼吸をして心を落ち着けた。
「よし、行こう。準備はできてる。」
輝晶石に近づくと、地面が突然震え始めた。霧の中から巨大な影が現れる。鋭い爪と牙を持つそのモンスターは、まるで恐竜を思わせるような威圧感だ。
「ご主人様、来ます! お気をつけください。」
モンスターが咆哮を上げ、こちらに突進してくる。その速度は想像以上だった。俺はギリギリで回避し、リュシアに目を向ける。
「リュシア、大丈夫か?」
「はい、問題ありません。ご主人様、側面を狙ってください!」
彼女が囮となり、モンスターの注意を引きつける。その間に俺は素早く側面に回り込み、渾身の力で一撃を加えた。しかし、モンスターはほとんど怯むことなく反撃してきた。
「くそ、硬すぎる……!」
「ご主人様、腹部が唯一の弱点です。そこを狙いましょう。」
リュシアの指示を受け、再び攻撃のタイミングを狙う。モンスターの動きは素早いが、攻撃後の一瞬の隙がある。それを見逃さず、腹部に狙いを定める。
「これでどうだ!」
武器が深く突き刺さり、モンスターが苦しそうにうなり声を上げる。その隙にさらに追撃を加え、ついに巨大なモンスターを倒すことに成功した。
「やったか……?」
「見事です、ご主人様。これで輝晶石を安全に採取できます。」
リュシアの言葉に安堵しながら、俺は輝晶石に近づいた。その光はまるで星のように美しく、触れるとほんのりと温かかった。
「これが輝晶石か……確かに価値がありそうだな。」
「はい、ご主人様。この鉱石はエネルギー供給において非常に重要です。街に持ち帰れば高い報酬が期待できます。」
慎重に輝晶石をバッグに収め、俺たちはさらに奥へと進むことにした。だが、この層はまだ終わりではなかった。
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