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『何故、これまで世界中で「魔法学園」が失敗してきたか御存知ですか?「魔法使い」を育てるには個性や適性に応じた個別指導が必要なのです。1人の「魔法使い」が一度に育てられる弟子は多くても3〜4人。生涯で、たった二〇人弱の弟子を一人前にする事が出来た「魔法使い」ですら「魔法使い」の中では歴史に名が残るレベルの天才教師なのです。残念ながら現実は「ハリー・ポッター」では有りません。「魔法使い」と「学園」は相性が悪いのです』

 色んな動画サイトに、ほぼ同時にUPされたらしい、その動画は……丁寧な説明の割に不謹慎極まりない内容だった。

 二〇世紀末の「魔法学園」モノの名作小説に出て来た例の学園を思わせる建物……そこでは、いかにもな制服を着た中学生ぐらいの子供達が楽しそうにしているが……その学園の一画で黒い爆発のようなモノが起きて、それは、どんどん広がり……そして……。

 全てが爆発に飲み込まれた後……画面は、「一般人は絶対立入禁止」の心霊スポットと化している大牟田に有る「国立第5魔法学園」の跡地をドローン撮影したモノへと変った。

『来年4月に開校予定の私立・江田島魔法学校では、マンツーマンの指導を行ないます。あなたも第一期生になってみませんか?』

「江田島って……広島だったっけ?」

「そ……」

 翌日の昼飯時、門司港駅近くの……おしゃれ系の喫茶店で、その宣伝動画を観ながら、俺と土屋はそう話してた。

「どう考えたって……これって……その……ヤクザが『魔法も使える組員』を養成する為の……」

「ま……そう思うのがフツ〜だよね。日本全国の御当地魔法少女の事務所も同じ事を考えたみたい」

「そりゃ、そうだよ」

「だから、。でも、

「えっ?」

 ちょ……ちょっと待て……。

 そんなに長い事を言われた訳じゃないのに……ツッコミどころが2つか3つぐらい有りそうな……。

「今『家に送られてきた』って言った?」

「そ、自宅に直接郵送したみたい」

「何で、広島のヤクザが……全国の魔法少女の自宅を知ってるの?」

「だから……漏洩してるんだよ……全国の魔法少女の個人情報が……広島のヤクザに……」

 ちょ……ちょっと待てよ……どこまで話が大きく……なって……。

「あ……あと……それとさ……ん? うわっ?」

 我ながら……多分、ホラー映画の撮影で、化物と出会した時に、こんな演技したら、監督から駄目出しされそうにしか思えない。

 けど……。

 何と言うか……現実で、本当に怖いモノを見ると……こんな感じになるんだろ〜なぁ〜……。

 土屋の方は……唖然としている……だけ……。

 喫茶店の窓には……真っ赤な顔色で、鼻水ズルズル状態の中島の顔が貼り付いて……。

 そして……中島の表情は……白目をむいた更に不気味なモノへと変貌してゆき……。

 ドオンっ‼

 え……えっと……中島の顔が真っ赤だったのは怒りじゃなくて……ひょっとして、高熱?

「救急車……呼んだ方がいいかな?」

「う……うん……」

 うん、「好きだった女の子を親友だと思ってる奴に取られた」……そう勘違いしたら、俺もこんな行動に出るかも知れない。

 でも……流石に風邪ひいたんなら、治ってからにする……と思う。

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