(14)
「ところで、何の用?」
赤いコートの女は……青いバイクの女に、そう言った。
「神政会の幹部が、青龍敬神会の縄張りで素顔を晒して歩く。それが何を意味するか判らんあんたじゃあるまい。ヤクザ同士で戦争でも始める気か?」
え?
「あ……あのさ……神政会って何? 青龍敬神会って何?」
俺は、土屋に、そう訊いた。
「ヤ……ヤクザ……」
「へっ?」
「神政会は……広島を実効支配してる暴力団……」
「ひ……広島ぁッ⁉」
十年前の富士の噴火以降「日本国内でありながら日本でなくなった」場所が2つ。
1つは府議会の第一党だった地方政党「獅子の党」が勝手に「新しい日本の首都」を名乗り出した大阪。
もう1つは、旧中央政府崩壊のドサクサで……ヤクザ達が裏から支配するようになった広島。
「そして……青龍敬神会って……九州三大暴力団の1つ……。いや、久留米の安徳グループが『正義の味方』に潰されたから……もう九州二大暴力団の1つか……そして……北九州市のほぼ全域は……青龍敬神会の縄張り」
「大丈夫。ちゃんと護衛は付けてるから……あ、そこで動画撮影してるマヌケさん達……こっから先は、アングラ系以外の大概の動画サイトの規約に引っ掛かる内容になるから」
赤いコートの女は……妙に脳天気な口調で、そう言うと、片手を上げ……。
「えっ?」
近くに居た、ある奴は……ナイフを取り出し……。
別の奴は拳銃……別の奴は……。
けど……一斉に武器を取り出した奴らは……。
お……おい……何で……?
武器を取り出した奴らが、どんな連中かは……たしかに、こんなのがヤクザの殺し屋とか、ヤバい組織の幹部の護衛なんて……フィクションならともかく現実だったら異常にも程が有る。
しかし、土屋の顔が……この異常な状況でも、更に異常なほどに……。
おい、今日、顔が真っ青になった奴を見るのは……何人目だよ?
どうなってる?
土屋は……座り込み……そして……。
嘔吐。嘔吐。嘔吐。連続嘔吐。
「吐き気がするな……在庫一掃処分か?」
青いバイクの女は、冷い声で、そう言った。
いや、理由は判んないけど……ホントに吐いてる奴が居るんですけど……。
「安心して。私の護衛達を殺しても、気に病む事は無いわ。
周囲の通行人も……あまりに異常な事態に気付いて……ざわめき始める……。
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