第7話 招待
祥子が教室に入ってきた。「由紀、待った?玲子も一緒か」と祥子。
「あなたも明日、塚原君の誕生日をお祝いするの?」と玲子。
「そうだよ。あいつは最近辛い思いをしてるから、たっぷり甘やかしてやるんだ」と祥子。
「どんな光景か見てみたいわ」と玲子。
「ベタベタ引っ付いて、雰囲気が盛り上がったら押し倒すんだ」と祥子。
「いやだ、いやらしい」と玲子。
「そんないい方したら、玲子が誤解するでしょう」と由紀。
「ああ、いっそのこと範経を食べてしまいたい」と祥子。
「まるでストーカーだわ」と玲子。
「わたしはどこまでも追いかけていくよ。今度家出したら捕まえて私の家に監禁するんだ。そして私だけのものにする」と祥子。
「家出?」と玲子。
「このままだと、きっとまた家出するわ」と由紀。
「前もしたの?」と玲子。
「そうよ。長いのだけで二度」と由紀。
「今回もそろそろやばい」と祥子。
「家出したら、あなたたちが探しに行くの?」と玲子。
「もちろんよ。でもその前に、わたしたち三人で他の高校に転校しようと思ってるの。明日、範経を説得するつもりよ」と由紀。
「あなたたち、転校しちゃうの?そんなのいやよ」と玲子。
「仕方ないわ。このままでは範経がかわいそうでしょ」と由紀。
「でもあなたたちまで転校しなくても。それに私も塚原君の話し相手になってあげられるわ。だから考え直してよ」と玲子。
「いまさら遅いよ。今日が限界だったんだ。ストレスで熱を出してぐったりしてる。今までのパターンだと、このまま家を出てもおかしくないんだ」と祥子。
「そんなひどいことになってるなんて知らなかったわ」と由紀。
「あんたなら平気だったのか?クラスの誰からも、先生からも一日中無視されて。それが二週間以上も続いてるんだ」と祥子。
「やっと範経が来たわ」と由紀。
「滝沢さんもいたんだ」と範経。
「塚原君、ごめんね」と玲子。
「何かあったの?」と範経。
「ずっと無視してて、ごめんなさい」と玲子。
「気にしてないよ。君が悪いんじゃないし」と範経。
「でも、……。ごめんなさい……ごめんなさい……」と玲子。
「泣かなくてもいいじゃないか。どうしたの?」と範経。
「あーあ、話すんじゃなかったよ」と祥子。
「ひょっとしてぼくのこと?」と範経。
「そうだよ、範経がいかにかわいそうかって説明したんだ」と祥子。
「そんなにかわいそうかい?でももう心配ないよ。明日、誕生日を祝ってもらったら、家出するから。もう学校には来ないよ」と範経。
「いやー!」と玲子。
「余計泣かせちゃったよ」と祥子。
「やっぱり家出するつもりだったのね」と由紀。
「うん、もう仕方ないよ。二人にもこれ以上を迷惑かけられないし」と範経。
「だめよ。あなたが出ていくなら、私たちも出ていくわ。一緒に転校しましょう」と由紀。
「君たちまで巻き込めないよ」と範経。
「範経がいないんじゃ、こんな学校にいても意味がない」と祥子。
「明日ゆっくり話し合いましょう。それまでは家出しちゃだめよ」と由紀。
「わかったよ」と範経。
「よかったら玲子も来て」と由紀。
「いいの?」と玲子。
「だから泣き止んで。何とかなるから」と由紀。
「絶対に行くわ」と玲子
「やれやれ、ぶりっ子も来るのか。いいのか、範経」と祥子。
「もちろんいいよ。多い方がにぎやかで楽しいから」と範経。
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