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社会に馴染んでいた【天使】は、その瞬間を以て敵となった。
私たちは彼らに憎悪を抱いた。健全な社会を破壊した彼らに殺意と隔意を惜しみなく注いだ。
人は同じ存在に敵対するときばかりは、野生など目ではないほど強く、団結する。実際のところそんな団結は、自分自身のためのものでしかないから、直ぐに瓦解するものなのだが、薄っぺらな理想で結ばれた大群ほど恐ろしいものはない。風の吹くような心地で外敵の抹殺に傾倒する。事実として世界の混沌は、渦の向きを逆に巻き始めた。悲しみと黙祷が紡ぐ蒼い波動は、怒りと殺意に巻き上げられて炎と燃えた。
そんな私たちの憎悪と殺意と隔意を、それでも【天使】は消し去った。たった六秒の間に、この世ならざる場所から現れて、私たちの不幸を消し去ってゆく。
人々は最早冷静ではなかった。無論、私を含めて。
だからそんな【天使】の仕事にも怒ったし、暇さえあれば空を睨み続けた。【天使】への怒りを、【天使】に消させ続けた。無駄な労働というものは、何時だって存在を疲弊させ、怒らせる。私たちはいっそのこと、【天使】に怒りの感情があったならば面白い、などと考えていた。
私たちは最悪の団結で繋がっていた。怒りと殺意に支配されて、まるで各々が正義の中にいると妄信していた。だから惜しみなく、身体を怒りに浸した。
こんな六秒。
されど六秒。
取り返しの付かない時間に、大小は無い。
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