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@Yellowrou

Gray

美術館が好きだ。たまにあの人に会えるから。

深い色をした長髪の、淡い色の服を着たあの人。まるで画家が現したかったことを掬い取るかのように、ひとつひとつの絵を食い入るように見つめる。何度も何度も訪れては、同じように時を過ごす。ある日は1人で、またある日は2人で。静かに笑い合っていたのが印象的だった。

閑散とし始めた遅めの時間、久しぶりにあの人は現れた。

1人で来るのは久々だと思いつつ目をやると、そこに長い髪はなかった。吸い込まれそうなほど美しい黒髪は肩の辺りで途切れている。心なしか寂寥を感じさせる姿だった。

閉園時間が近づき、その旨を伝えるアナウンスが流れた。彼女は弾かれたようにグレーを基調とする絵画から目線を外し、さっと外に出た。私は、柄にもなくその後を追いかけた。色を感じさせない冬の公園。あの人はベンチに座り空を眺めている。夏には多い子供の高い声もこの寒さでは聞こえない。どうしたのだろう、1人の人間のことがこんなにも気にかかるなんて。今にも壊れてしまいそうなあの人を前に、私の心は焦ることしかできない。どうにかして励ましたいと願うが、寄り添うことぐらいしかできないこの身が憎らしくて仕方がない。いくら悔やんで憎もうとも、身の丈にあったことしかできないのに変わりはない。あの人に触れるか触れないかほどの距離。ベンチに飛び乗り鳴いてみるのだ。


「にゃあお」

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