第3話
ピーンポーンピーンポーン
美明は友人の家に来ていた。
その日、美明は友人のマンションに泊まる予定だ。
ピーンポーン
インターホンを何度も押す。
しかし今日はいつもならすぐに出てくる友人が出てこない。
不安が心を過った。
美明には霊感があった。
災いが起きる時、美明は気づいてしまう。
友人に話したことがあるが,疎遠になってしまった。
でも,梨花は信じてくれていた。
嫌な予感が的中しませんように,と祈りながらインターホンに向かって恐る恐る声をかける。
声が震えていた。
「梨花~梨花~いないの梨花?」
………………………………………………………
しかし梨花は一向に出てくる気配がない。
予感に信憑性が高まり,ドキッとした。
美明は、自分に,梨花は約束を忘れただけ,と言い聞かせるように、約束したのにと文句を言いながらメールを送る。
「梨花、どこに行ったの? 今日泊まる約束だったじゃない!」
しかしその返信はいつまでたっても来ないのであった。
何時間経っても……何日経っても……何週間経っても……
1ヶ月がたち、美明は梨花のことを気にかけながらもいつも通りの生活を送っていた。
ある日の夜、美明が何気なくニュース番組を見ていると、
「花木梨花さん自宅マンションで死亡」
と言う文字が映し出される。
花木梨花。それは梨花のフルネームだ。
嫌な予感が的中してしまった。
同姓同名の別の人であってほしいと祈りながら,美明は画面に釘付けになる。
鼓動は早まる。
「花木さんは部屋で調べ物をしていた際、何らかの原因により変死した模様です。死亡推定時刻は10月3日の5時ごろとされています。」
とニュースキャスターは続けた。
10月3日5時
それは美明が梨花の家に泊まる予定だった日。美明が梨花の家にいく一時間ほど前。
ーー奴瘉悲歌の伝説。
美明の頭にこの言葉がよぎる。
梨香はこの歌を歌ったのではないか。
それは美明も知っている都市伝説。
知ったものは皆歌いたくなる歌……歌ってはいけない歌……私も本当は歌いたい……歌……梨花は歌ってしまったのだろうか……
美明は梨花の死因と奴瘉悲歌伝説について調べることを決意して静かな部屋の中眠りについた。
静かな部屋の中に美明の歌声が静かに響く。
はっ,歌ってしまった…
美明はそう気づき歌うのをやめたが遅かった。
ドンドンドンドン
ドアを叩く音が聞こえてきた。
壁にかけてあるお札を引っ掴み,クローゼットに隠れる。
…お願い…お願い。…私はまだ全部歌っていないの…!…助けて!
心の想いが爆発しそうで,美明は口を押さえる。
「助けて…!!」
気づけば美明は叫んでいた。
みぃいつけたぁ
クローゼットの扉は開かれ,女が覗き込んでいた。
手に握られたお札は黒ずみ,ボロボロになっていた。
美明は一人、階段を上っている。足取りは軽く、心は高揚していた。突然、上の方から誰かが声をかける。
「こっちにきて!……美明…」
強い光の向こうにはうっすらとした女性の影が霞む
その影に梨花の姿がそっと浮かび上がる。
「梨花……?」美明は驚きを隠せない表情で呟く。
梨花は優しい微笑みを浮かべながら美明に近づき彼女の手を取る。「わたしだよ。待っていたの。美明」
美明は階段を上る。梨花と手を取り合い、上へ、上へと階段を上る。
美明の心は高揚し、自然とあの歌を口ずさむ。
眼の光は消え、薄ら笑いを浮かべた美明は梨花と共に階段を昇ってゆく。そこに,水たまりがあった。
水溜まりに映る梨花を見て美明は気がついた。
そして,口を開く。
「あんたは梨花じゃない!わたしは見た。貴方の正体は奴瘉。でしょ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます