第7話 新たなる出発とそして……
アルドはすぐに彼女の元へ駆け寄り、抱きしめた。
「アイリア、終わったんだ。もう大丈夫だ」
しかし、彼女の生命の光は完全に消え、アルドは彼女がもう二度とこの世に息を引き戻すことはないことを悟った。胸の奥底から湧き上がる悔しさと悲しみが、彼を打ちのめした。自分がアイリアを見捨てた結果がこの結末だと、深く自責の念に駆られた。彼女を救えなかった無力感と、彼女の最期を見届けるしかなかった痛みが、アルドの中で渦巻いた。
エスティアはその結末を見つめ、黙ってアルドの肩に手を置いた。彼女はアルドの悲しみを共有しながらも、何かを決意したかのように、静かにその場を去った。
それから少しの時間が流れた。アルドはアイリアの亡骸を見つめ続けるしかなかった。彼の心は、過去に戻りたいという無力な願望に苛まれ、未来への道が見えなくなっていた。
さらに少し時間がたち、エスティアが再び戻ってきた。彼女は心を決めた表情でアルドを見つめた。
「アルド……あなたを元の世界に送り返すわ」
アルドはその言葉に反応し、苦しげに言った。
「俺は……こんな結末を望んでいなかった。アイリアを……エルを……」
エスティアは静かに、悲しげに続けた。
「エルは……もう亡くなっているの……。ここにいたエルは魂だけの存在。時期にその魂も消滅するわ」
アルドはその言葉に打ちのめされた。エルまで失っていたという現実が、彼にさらに深い悲しみを与えた。友情と愛が織りなした運命の重さが、彼の心を圧し潰す。
「わかった……俺は、戻るよ……」
エスティアはその決意に頷き、詠唱を始めた。
「我が風よ、帰るべき場所へ導け、テレポートバックス!」
魔法がアルドを包み、彼は光の中で徐々に消えていく。エスティアの顔が最後に見えたとき、彼女は微笑んでいた。その笑みには、別れの寂しさと、新たな始まりの祈りが込められていた。
「強くいきてね……」
アルドには彼女がそう言っているかのように聞こえた。
アルドは元の世界へと戻され、異世界での経験とアイリア、エルとの別れを経験した彼はその日は生きる希望を失ったかのようにただ茫然と過ごした。
しかしいつまでもこれではいけないなと思い、一歩を踏み出す覚悟を決める。
「いつまでも俺がこんなだと、アイリアも悲しむかもしれないな……」
この出来事すべてが自分の行動によって引き起こされたことなのだが、今はこう思うしかなかった。
アルドは町を歩きながら、アイリアとエルへの思いを胸に抱えていた。彼の足取りは重く、しかし確実に一歩ずつ前に進んでいた。港からは離れ、廃墟と化した街の中心へ向かった。かつては賑わっていた場所も、今は静寂に包まれ、草が生い茂っていた。
港にいくと船はあったが、仲間たちはいなかった。
「仲間たちも……まさか……」
数日間、アルドはもしかしたらと思い、仲間たちを待ち続けた。しかし仲間たちは決して戻ってくることはなかった。
アルドはひとり船を整備し、再び海に出る決意をした。船に乗り、広大な海へ出ることで、心の傷を癒すことも、過去と向き合うこともできると思ったからだ。
海に出ると、アルドは船の縁に寄りかかり、海を見つめた。仲間たちと過ごした船にいまは自分だけ一人という状態に悲壮感が漂う。
しかしそのような中でも、波の音が彼の心を少しずつ洗い流していく。アイリアの笑顔、エルの笑い声、そしてエスティアの言葉が、海の広さと深さに溶け込んでいくようだった。
「俺は、まだ生きてるんだな」
彼はそう呟きながら、海の彼方を見つめた。そこには何が待っているのかわからないが、未来への一歩を踏み出す覚悟ができていた。アルドは自分自身と向き合い、過去の痛みを乗り越え、新たな人生を築く決意を新たにした。
途中によった街で、新たな仲間を作り船員を増やしていった。
それから1年の月日が流れ、彼は立派な船長になる。さらにそこから数年後、アルドは未知の土地にたどり着く。その港に降り立ったとき、そこもまた廃墟と化していた。しかし、その廃墟の中に、一人の少女がいた。彼女は、アイリアにそっくりだった。金髪のロングヘア、青い瞳、そして何よりもその雰囲気があまりにも似ていた。
アルドはその瞬間、驚きが交錯する中で、彼女に近づいた。少女は彼の視線に気付き、笑顔で近づいてきた。
「また会えたね、アルド」
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