何者かも知らないあなたへ
私は、今まさにこの文章を読んでいるあなたに告白をしている。
アレはそうやって作られた。
彼女が死んだ穴の土を塗り込んで。怨念を文字に変えた原稿を灰に変え、3回目のワークショップで私は仮面の目と口の表情を描いて命を吹き込む。
それから、彼女のキーボードから剥がしたいくつかのキーを口の中に並べて歯に見立てて飾り付けるだろう。
最後に、余った原稿の紙をちぎって空いたスペースに張れば、私の呪物は完成する。
『肌』をルミノール検査にかければ血液反応が出るだろうし、『歯』には彼女の指紋がまだ残っているかもしれない。
アレは他の仮面の中のひとつとして展示される。
けれど私の罪はおそらく白日の下に晒されない。
この文章にたどり着いた人間は、冗長な小説だと判断した瞬間にブラウザバックする。
あるいは気まぐれで読んでみたとしても、途中で飽きてやめてしまうだろう。
ここまで読んだ酔狂なあなたもきっと警察に通報しない。
あなたは常識人の仮面を被り、温厚な苦笑いを浮かべている。
万が一警察に捜査をさせた挙句、「一応結果を報告させていただくと、ただの小説でしたよ。仮面の作者も本当に信じる人がいたことに驚いてました」などと呆れ顔でたしなめられることを想像すると、はなから疑いを抱くのも馬鹿馬鹿しくなるはずだ。
感謝しています。
私の呪いをあなたの中に受け入れてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます