何者かも知らないあなたへ

私は、今まさにこの文章を読んでいるあなたに告白をしている。

アレはそうやって作られた。

彼女が死んだ穴の土を塗り込んで。怨念を文字に変えた原稿を灰に変え、3回目のワークショップで私は仮面の目と口の表情を描いて命を吹き込む。

それから、彼女のキーボードから剥がしたいくつかのキーを口の中に並べて歯に見立てて飾り付けるだろう。

最後に、余った原稿の紙をちぎって空いたスペースに張れば、私の呪物は完成する。

『肌』をルミノール検査にかければ血液反応が出るだろうし、『歯』には彼女の指紋がまだ残っているかもしれない。

アレは他の仮面の中のひとつとして展示される。

けれど私の罪はおそらく白日の下に晒されない。

この文章にたどり着いた人間は、冗長な小説だと判断した瞬間にブラウザバックする。

あるいは気まぐれで読んでみたとしても、途中で飽きてやめてしまうだろう。

ここまで読んだ酔狂なあなたもきっと警察に通報しない。

あなたは常識人の仮面を被り、温厚な苦笑いを浮かべている。

万が一警察に捜査をさせた挙句、「一応結果を報告させていただくと、ただの小説でしたよ。仮面の作者も本当に信じる人がいたことに驚いてました」などと呆れ顔でたしなめられることを想像すると、はなから疑いを抱くのも馬鹿馬鹿しくなるはずだ。


感謝しています。

私の呪いをあなたの中に受け入れてください。

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