故郷の消滅〜シドの行方〜

Vとマルコの父カサフは、

盗賊団首領iを追い詰めたが、

もう一歩という所で逃げられてしまい、

その後の手がかりは、iが残した尻尾以外に無く

(彼らは思案したのち念の為持ち帰ること

にした)、

一旦村に帰ることにしたのだった。


カサフとしては、マルコの容体も

気になるところだ。


Vの姿は人間に戻った。


新月が白んだ朝になり見えなくなった頃合いで。


何故かまるで霧が晴れるように、

Vの心は澄んで。


「お前、狼だったんだな···」


カサフが、朝日に照らされた山道に視線を落としたまま呟いた。


(ああ。俺は··獣なのよ)


「だから言葉が··」


(ううん。ただ、母親が教えてくれなかっただけだよ。俺を産んですぐ、別の狼の所へ行っちまった···)


Vは俯き、目頭の辺りが熱くなっていくのを

"人間"として感じた。。


カサフは、Vの逞しく毛深い肩にそっと手を置き


「お、···俺がお前の母ちゃんにならぁ!」


と涙ながらに気付けば叫んでいた···。


中空高度を上げる太陽、二人見下ろし、

長年連れ添った親子のような影を作った。


···その頃、V達の異母国村は文字通り、

跡形も無く消滅していたのだった。


その時の二人はそれを知る由も無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

V キオク @tayumukioku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画