第7話
ランチを終えた遼と楓は、モール内の店舗が並ぶエリアへと足を踏み入れた。
ショーウィンドウには、春らしいパステルカラーの洋服やカラフルな雑貨が並び、道行く人々の視線を引きつけている。
休日らしい賑わいがモール全体を包み込み、どの店も活気に満ちていた。
「どこから見る?」
遼が隣を歩く楓に問いかけると、楓は少し考え込むように店の並びを見渡した。
「せっかくだし、服とか見る?最近あんまり買ってないし」
「いいね。じゃあ、あそこの店とかどう?」
遼が指差したのは、シンプルでカジュアルなデザインが並ぶアパレルショップだった。
楓は軽く頷き、店の入り口へと向かう。
◇
店内は、春の雰囲気を映し出すような柔らかいパステルカラーの服で彩られていた。
楓はラックに並んだ服を一つずつ丁寧に眺めながら、真剣な表情を浮かべている。
「これ、どう?」
楓が手に取ったのは、淡いラベンダーカラーのカーディガンだった。
柔らかな生地とシンプルなデザインが、彼女の落ち着いた雰囲気にぴったりだ。
「いいんじゃない?そういうの、一条さんにすごく似合いそう」
遼が迷いのない声で答えると、楓はふっと笑みを浮かべた。
「そっか。それなら試着してみようかな」
しばらく服を選んだ後、楓は試着室へと向かった。
数分後、カーテンが開き、カーディガンを羽織った楓が姿を現す。
その姿はシンプルながら、どこか品のある佇まいを感じさせた。
「どう?」
少し照れた様子で尋ねる楓に、遼は少しだけ目を見開いて答える。
「似合ってる。……すごくいいと思う」
その言葉に、楓はふっと目を伏せて小さく頷いた。
「そっか。ありがと」
楓の声は控えめだったが、どこか満足そうな響きがあった。
◇
服を見終えた後、二人は雑貨と小物が並ぶ店へと足を運んだ。
店内には、カラフルなバッグや帽子、可愛らしいステーショナリーが所狭しと並んでいる。
「これ、面白くない?」
楓が手に取ったのは、猫のイラストが描かれたユニークなトートバッグだった。
猫の表情とともに、どこか抜けた英語のフレーズがコミカルにプリントされている。
「いいね、それ。普段使いにもちょうど良さそうだし」
遼が微笑みながら答えると、楓は少し首を傾げ、バッグを棚に戻した。
「面白いけど、実際に使うかは微妙かな」
「まあ、確かに。けど、こういうの見るだけでも楽しいよね」
さらに二人は帽子コーナーに移動した。
楓がシンプルなキャップを試しにかぶると、遼がふっと笑みを漏らす。
「それ、意外と似合う。一条さん、カジュアルなのもいけるね」
「そう?でも、帽子をかぶる習慣ってあんまりないんだよね」
楓はそう言いながら、少し首を傾げてキャップを戻した。
「でも、たまにはいいかも」
◇
店の奥に進むと、洗練されたデザインのノートやペンが並ぶステーショナリーコーナーが目に入った。
楓はシンプルなデザインのノートを手に取り、じっとページをめくる。
「これ、いいね。デザインがきれいで」
「確かに。学校で使うのにも良さそうだ」
遼が同意すると、楓はページを閉じて小さく笑う。
「買おうかなって思ったけど、家にまだ使ってないノートがたくさんあった気がする」
「分かる。でも、新しいのが欲しくなるんだよね」
「そうそう」
二人は同時に小さく笑い合い、ノートを棚に戻した。
◇
雑貨店を出た後、二人はモール内を歩きながら軽く話をしていた。
「今日は結構歩いたね」
「うん。でも、楽しかった」
楓が素直に答えると、遼は少し微笑みながら言葉を続けた。
「普段あんまりこういう店に来ないから新鮮だったよ。一条さんのおかげだね」
「私のおかげって何?ただ付き合わせてるだけじゃない」
「そう?でも、一緒にいると楽しいし、それで十分だよ」
楓は一瞬だけ足を止め、ふっと小さく笑みを浮かべた。
「……まあ、たまにはこういうのも悪くないかもね」
そう呟いた楓の声には、どこか柔らかさが感じられた。
二人はそのまま並んで歩き出し、モールを後にしてマンションへと向かった。
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