第7話

ランチを終えた遼と楓は、モール内の店舗が並ぶエリアへと足を踏み入れた。

ショーウィンドウには、春らしいパステルカラーの洋服やカラフルな雑貨が並び、道行く人々の視線を引きつけている。

休日らしい賑わいがモール全体を包み込み、どの店も活気に満ちていた。


「どこから見る?」

遼が隣を歩く楓に問いかけると、楓は少し考え込むように店の並びを見渡した。


「せっかくだし、服とか見る?最近あんまり買ってないし」

「いいね。じゃあ、あそこの店とかどう?」


遼が指差したのは、シンプルでカジュアルなデザインが並ぶアパレルショップだった。

楓は軽く頷き、店の入り口へと向かう。


 

店内は、春の雰囲気を映し出すような柔らかいパステルカラーの服で彩られていた。

楓はラックに並んだ服を一つずつ丁寧に眺めながら、真剣な表情を浮かべている。


「これ、どう?」

楓が手に取ったのは、淡いラベンダーカラーのカーディガンだった。

柔らかな生地とシンプルなデザインが、彼女の落ち着いた雰囲気にぴったりだ。


「いいんじゃない?そういうの、一条さんにすごく似合いそう」

遼が迷いのない声で答えると、楓はふっと笑みを浮かべた。


「そっか。それなら試着してみようかな」


しばらく服を選んだ後、楓は試着室へと向かった。

数分後、カーテンが開き、カーディガンを羽織った楓が姿を現す。

その姿はシンプルながら、どこか品のある佇まいを感じさせた。


「どう?」

少し照れた様子で尋ねる楓に、遼は少しだけ目を見開いて答える。


「似合ってる。……すごくいいと思う」


その言葉に、楓はふっと目を伏せて小さく頷いた。


「そっか。ありがと」


楓の声は控えめだったが、どこか満足そうな響きがあった。


 

服を見終えた後、二人は雑貨と小物が並ぶ店へと足を運んだ。

店内には、カラフルなバッグや帽子、可愛らしいステーショナリーが所狭しと並んでいる。


「これ、面白くない?」

楓が手に取ったのは、猫のイラストが描かれたユニークなトートバッグだった。

猫の表情とともに、どこか抜けた英語のフレーズがコミカルにプリントされている。


「いいね、それ。普段使いにもちょうど良さそうだし」

遼が微笑みながら答えると、楓は少し首を傾げ、バッグを棚に戻した。


「面白いけど、実際に使うかは微妙かな」

「まあ、確かに。けど、こういうの見るだけでも楽しいよね」


さらに二人は帽子コーナーに移動した。

楓がシンプルなキャップを試しにかぶると、遼がふっと笑みを漏らす。


「それ、意外と似合う。一条さん、カジュアルなのもいけるね」

「そう?でも、帽子をかぶる習慣ってあんまりないんだよね」


楓はそう言いながら、少し首を傾げてキャップを戻した。


「でも、たまにはいいかも」



店の奥に進むと、洗練されたデザインのノートやペンが並ぶステーショナリーコーナーが目に入った。

楓はシンプルなデザインのノートを手に取り、じっとページをめくる。


「これ、いいね。デザインがきれいで」

「確かに。学校で使うのにも良さそうだ」


遼が同意すると、楓はページを閉じて小さく笑う。


「買おうかなって思ったけど、家にまだ使ってないノートがたくさんあった気がする」

「分かる。でも、新しいのが欲しくなるんだよね」

「そうそう」


二人は同時に小さく笑い合い、ノートを棚に戻した。


 

雑貨店を出た後、二人はモール内を歩きながら軽く話をしていた。


「今日は結構歩いたね」

「うん。でも、楽しかった」


楓が素直に答えると、遼は少し微笑みながら言葉を続けた。


「普段あんまりこういう店に来ないから新鮮だったよ。一条さんのおかげだね」

「私のおかげって何?ただ付き合わせてるだけじゃない」

「そう?でも、一緒にいると楽しいし、それで十分だよ」


楓は一瞬だけ足を止め、ふっと小さく笑みを浮かべた。


「……まあ、たまにはこういうのも悪くないかもね」


そう呟いた楓の声には、どこか柔らかさが感じられた。

二人はそのまま並んで歩き出し、モールを後にしてマンションへと向かった。

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