第9話
「小林結衣さん、あなたと眞山社長の関係を伺っても、よろしいですか?」
「私と眞山社長は…付き合ってました。
ちょうど、その関係は一年です」
「付き合っていた、と言っても、色々ありますよね?」
そう問われ、え?と思う。
いや、この場合の付き合っているは、男女のそれでしかないはず。
「ほら、ちょとそこまで"付き合って欲しい"とか」
その明らかに私を馬鹿にしたような言葉に、私が眉間を寄せると。
「あなたと、眞山社長が付き合っている、と何か証明出来ますか?」
そう言われ、頭の中で色々と思いを巡らせるけど、
付き合っていると証明出来る何かが何もない。
「例えば、あなたと会う時に、例えばですけど、
何処かのホテルを利用していたとしましょう」
例えば、と滝沢斗希は言うが、その辺りの事も、眞山社長からこの人は聞いているのだろう。
眞山社長は現在実家暮らしで、会社の寮に住んでいる私と彼の会瀬は、いつもホテル。
そのホテルのレストランで食事をして、
そのまま部屋へ、というのがこの一年間のルーティーン。
彼からこの交際は、まだ周囲には内密にしておこうと言われていて、
彼の会社での社長だと言う立場を考えて、私はそれを何も疑問に思わなかった。
社長が担当の秘書と付き合っているなんて周りに知られたら、
周りにどう思われるか。
だから、いつも彼とは人目を憚るように会っていた。
だから、デートらしいデートなんてした事もなかったし、
私と眞山社長が付き合っていたなんて、誰も知らない。
「そのホテルでも、例えば偽名を使っていたり…とか。
もし、ホテルの従業員があなたと眞山社長を見ていたとしても、ホテルの人達が客のプライベートな事を話さないでしょう」
この人の言うように、眞山社長はいつも偽名でホテルを取っていた。
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