第5話

「---別れて欲しい」



それは、いつものようにホテルのベッドの上で、行為を終えた後。



同じベッドの中、眞山社長は私の隣で寝転びそう口にした。



その言葉は、私の顔を見ずに淡々と告げられた。



「えっ、別れてって…」



私は突然のその言葉に、頭が追い付かない。



何かの冗談なのだろうか?と思っていた。




「最近、婚約したんだ。

いや、それはまだ正式なものではないのだけど。

それは、親が決めた相手なんだ」



政略結婚…。



大会社の社長で、御曹司でもある彼が、

ただの秘書の私なんかと、結婚するわけがないと、彼と付き合っている間何処かでずっと頭にはあった。



だから、いつかこんな日が来るんじゃないかと。



なのに。



「けど、私…。

妊娠してるの…。

綾知さんの子供を」



そう口にしていた。



それは、嘘だった。



私は妊娠なんてしていない。



眞山社長と関係を持ち始めてすぐの頃から、ずっと低容量ピルを服用している。



それは、眞山社長から頼まれてそうしていた。



ゴムに対して、軽いアレルギーがあるからと。



私と初めての時は、ゴムを付けてくれていたけど、

二度目以降は、私がピルを服用して避妊をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る