第397話

「…咲の顔は世間に

公表されている。


だから、一緒に居るのが

困るんだ」



涼はさっき迄とは違う口調で、

そう言う



今の涼の表情や口調は、

いつもの涼と殆ど一緒で、

その全てが私の心を

強く掴む



余計に、涼から離れられなくなってしまった





私はソファーに置きっぱなしになっていた、


自分の鞄に近付き、

漁るように中に手を

突っ込んだ





「咲?」



涼は私のその行動を、

不思議そうに見ている





私は鞄の中から、

バタフライナイフを

取り出した



夕べ、涼から渡された物だ



きっと、これを使う事はないと思っていた



そして、こんな形でも





私は何の躊躇いもなく、

それで自分の髪の毛を切り落として行く



パサリ、パサリ、と、

小さくも大きくも無い音をたて、


私の髪は床に落ちて行く

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