第392話

「咲は、あまり母親に

重ならない…。


お前はまだ汚れていない。

だから、俺はお前を好きになったのかな?」



涼は床を眺めながら、

そう口にしている



私は涼のその言葉の意味が分からず、

ただ聞いているだけだった





「もう、お前は帰れよ。

また俺はお前を殺そうとするかもしれない」




「…いやだ、いやっ」



私はベッドから降りると、

涼の肩を両手で

強く掴んでいた





「俺、ずっと忘れていた…。

だけど、思い出したんだ…。


母親を殺したんだ…。


俺は二重人格なんかじゃない…


俺が…女を殺した…。


今も思い出しただけで、

あの快感が蘇ってくる」



涼は自分の両手を見つめ、声を出して笑っている



その姿はとても猟奇的で、恐ろしい殺人鬼だ



私はもう言葉が

出て来なくて、


代わりに涙が

溢れ出してくる

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