第327話

「理由なんてないよ。

ただ、殺したかったんだよ…」




『嘘だよ…。


…言いたくない理由なの?


涼はそんな事をする奴じゃない…。


私の知っている涼は、

誰よりも優しくて…、

明るくて…だから私は…』



咲の声が、

嗚咽で途切れ途切れに

なっていて、


最後の方は、

もう何を言っているのか

殆ど分からない



だけど、

聞こえた



“だから私は…


涼が好きで…”





『好きだよ…涼…』



咲はこの言葉を、

何度も繰り返していた



咲のその言葉が

何度も心に響いた



自分の頬に

涙が伝うのを感じた

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