第326話

『だけど、愛美を

殺したのも、


涼じゃないんでしょ?

貴方の中にいる…

もう一人の…』



咲の声は泣いているのか、

震えている





「違うよ。

田中を殺したのは俺だよ。


田中の首を絞めた

あの感覚…。


今でもハッキリと

覚えているよ」



俺は、自分の右手を見た



この手で、

何人の命を奪ったんだろうか?





『…なんでなの?

…涼は愛美と付き合ってて…。

なんで、涼は愛美を殺したの…?』



咲のその言葉に、

言葉が出ない



咲の望むように、

本当の事は言えない



お前を守る為に

田中を殺したなんて、


言えない



もし言えば、

咲は自分を責めるだろう

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