第209話

「俺…」



躊躇いながらも、

ゆっくりと、

続きの言葉を口にした





「俺、記憶が無いんだ。

二重人格かもしれない…。

もう一人の俺は、

人を殺しているかも

しれない」



俺のその言葉は、

周りの騒音に混じり、

咲以外の耳には届いて

いないだろう



周りの人間は、

皆、俺に無関心で、

俺の横を通り過ぎて行く



ただ、咲だけが、

驚いたように目を見開いて、

俺を見ていた

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