第85話

「…別に、どうもしてないよ」



俺は愛想無くそう言うと、すぐに机に荷物を下ろして、

イスに座る



二人が話していた会話は何かは知らないが、


連続通り魔殺人の犯人が俺じゃないかとか、


そんな類いの話では

ないだろう



そう思いホッとしたのと

同時に、

夕べの咲との電話を

思い出していた



咲の顔を見た時に、

思い出した



『…いないよ』



咲はそう言った



咲は好きな奴はいないと

言った



もしかしたら、

咲は俺の事を好きなんじゃないだろうか?



そう思っていたから、

凄く堪えた



だけど、俺は諦めが悪いのか、


何処かでは、

そう言うしか無かったのかもしれないんじゃないだろうか?



そうとも思う



俺だって…



『…いない』



咲にそう言ったから

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