第2話 弓使いと煙草

「いろんなものを見すぎた。とは一体どういうことですか?」


「あー話す話す。ちょっと待ってくれ、煙草吸うから。『ファイヤー』」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。


「勇者様、。弓使い殿の話も聞きたいのですが、その煙草はいったい……」


 国王は名の知れた愛煙家だ。

 勇者の煙草に目が行くのも当然だろう。


「あ、気になります?でも、これ、あんま吸わないほうがいいですよ。だってこれ、毒ですから」


「毒?一体どういうことですか」


「毒だよ。毒。覚醒剤の一種を乾燥させて、煙草にしたものだよ」


「覚醒剤。とは?」


「あ?吸うと最高にハッピーな気分になれて、集中できるんだよ」


「それは、最高の薬ではないですか」


「いや、そんなことない。副作用があんだよ。しかもこれは国にあるようなあんな低いレベルの奴じゃない。俺が勇者じゃなくて、普通の国民だったら一瞬で脳が溶けて死ぬようなヤバイ煙草だ。ま、俺にはもうこの煙草も効かなくなってきてるんだけどな」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。


「そんな……。それで、弓使い殿の最期はいったいどんなもので?」


「あ?自殺だよ」


「じ、自殺?」


「ああそうだ。自殺だ。あいつは何もかもを見すぎたんだろうな。魔物の断末魔魔物に襲われる人間の悲鳴。叫び声。あいつは木の上からすべてを傍観しているからこそ、見えすぎたんだ。ま、今となってはそれが正しいのかすらわからないがな。あいつは、一人で魔物の基地を襲撃し、一切の抵抗もせずに死んだ。死体がそれを物語ってた。しかも、そいつ猟奇的な笑みを浮かべてたんだ。そこからだな。俺たちがおかしくなったのは」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。


「その直後、俺たちが直面した問題。そう、食糧不足だ。だから俺たちは何を食った思う?」


「え?野草とかですか?」


「違うな。正解はモンスターだ。」


「モ、モンスター?」


「ああ。モンスターだ。わかるよ、戸惑うのは。だってあれだもんな。あいつら、食べるのに手間かかる上に、そんなにおいしくもなく、その上、可食部も少ないときたもんだ。だが、俺たちはもうそんなのを食うしかなくなってたんだ。野草なんか食っても、蛋白質たんぱくしつも炭水化物もとれねぇ。はじめは毒兎ポイズンラビットなんていう、まだ動物の形をしたモンスターを食ってたんだが、魔王城に近づくとそうはいかなくなってきてな人豚オークとかドラゴンなんかも食うようになってきてた。はっきりいって、あんときはもうやばかったよ」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。


「そこでだな。もう一人死んだ」


 勇者は、煙草を投げ捨て。そういった

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