勇者の凱旋記~勇者と仲間の物語~

団栗珈琲。

第1話 魔王討伐と勇者の凱旋

「ぜぇ……はぁ、はぁ。やっと倒した。……くそう。失っちまった。何もかも」


   ✕   ✕   ✕   ✕


「勇者様だ!勇者様が凱旋なされたぞ!門を開けよ」


 国中が盛大な歓声とともに勇者を迎え入れる。


 そして、勇者は門を通され、謁見の間へ案内される。

 そこにはこの国の国王がいた。


「勇者様。よくぞ我が国までお戻りいただけました!」


「はあ……。あ、国王さん。煙草吸うけど、大丈夫?」


「え?あ、はい。大丈夫ですが……。」


「あーそう。ならいい」


 そういうと、勇者はポケットから、煙草を取りだし、机に軽く何回か煙草を打ち付ける。


「『ファイヤー』」


 勇者がそう言うと、煙草に明かりがともる。


 プスー。プハー。

 勇者の口の中から煙が出る。

「もうこいつも効かなくなってきたな。また新しい調合方法でも探すか……。」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。


「あ、あの……勇者様……それで、旅に出たお仲間は?」


「え?仲間?あ、あいつらのことか。……死んだよ」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。

 心なしか、勇者の顔に陰りが見える。


「死…死んだ?それは本当ですか?」


 国王は動揺しつつもそう聞く。


「本当だよ。ここで嘘吐いてどうすんだよ」


 プスー。プハー。勇者の口から煙が出る。


「それはそうですね。で、では大変立派な最期さいごを遂げたのですか?」


「立派か……」


「あ、いえ。いいのです。この後、勇者様に国民総出でその話してしてもらいたいのですが……」


「はあ……」


「いや、嫌というのでしたら別のいいのですが……」


「いいよ。やる」


 そういって、勇者は近くにあった灰皿に煙草を押し付けた。


「そうですか!では、ここを通ってもらって……」


 国王は、国民が集まる。壇上へと案内した。


 勇者が壇上に立つと、それは黄色い声援が歓声が響く。

 国民は様々に「あれが勇者様か」「だいぶ顔がやつれておられるな」など、勇者の外見に反応しているようだった。


 それに加え、「お仲間は?」と勇者が一人で壇上に立っているのを機にする者もいた。


「キィン」耳障りな音が響く。


「なんだ?拡声魔法か?まあいいか。はい。皆さんどうも勇者です。えー。なんで俺が一人で壇上に立っているのかって話なんですけれど、まあ俺意外全員死んじゃってね。それも含め、いままでの冒険譚?とでもいうやつを語ろうと思いまーす」


 国民はそれを聞き一斉にざわつき始める。


「はいはい。まあみんな聞きたいと思うよ。俺の仲間がどう死んでいったのか」


 勇者の話をより近くで聞こうとでも思ったのか、国王が勇者の横に立つ。


「まず、一番最初に死んだ奴。そうだな弓使いだ」


「ゆ、弓使い殿ですか?ですが、弓使い殿は木の上に登り、そこおから狙撃するのでしょう。なぜ一番初めに……」


「わかんないか。わかんないよなぁ。あいつはいろんなものを見すぎたんだ」

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