第6話 農場 上
農場の家の玄関の前に建ち
ドアをノック。
「もしもし、すいません。」
もう一度。
今度は強めにノックする。
応答がない…
家の周りの霊気の状況に異常は見つけられない。
ドアノブを回すとすんなりと玄関の扉が開いた。
「ちょっと!」
背後から声がかかる。
エレーニだ。
「ジョンの連れといつまでも密室に居させないでよね! シンディと巨人を探してるんでしょ? 人海戦術って知ってる?」
「知ってはいるけど。まぁいいや、家の中を見て回ろう」
「任せて!」
まずベルシモックを先行させ、次に俺とエレーニで家の中に入っていき
シャドウが後ろをカバーするように続く。
家の中の電気は付いていないがリビングルームの暖炉に火がついている。
誰かがいるはずだ。
「おーい! すいません! 誰かいますかー!」
返事はない。
ゴーストを俺の体から分離して上の階に向かわせる。
ベルシモックにキッチンを見に行かせ
2体に何かあり次第連携が取れるようにシャドウを配置。準備しておく。
1階書斎にも誰も居ない。
一階は無人。
そのまま2階に上がると、三つの寝室。
恐らくマスターベッドルームが1つと、あと2つの寝室。
階段から一番近い部屋を開けると誰かの部屋。
チカチカと点滅する裸電球が部屋を照らしていた。
薬が多い。何となく老人の部屋のような気がした。
老人の部屋には誰もいなかったがベッドのシーツや小物が床に散らかっていた。
廊下に出て斜め向かいのもう一つの部屋に入ると
子供部屋のようだった。電気は机の上のライトだけが付いていて薄暗い。
勉強机の下に誰かがいる。
エレーニが目を見開く。
「誰なの?」
勉強机の下からおびえたような声。
頭からシーツをかぶっている人間がいた。
「人探しをしてて…」
「それで、誰なの?」
「ジョンスミス、誰かいませんかってさっき下の階から言ってたんだ」
「聞こえてたよ、怖かったから返事しなかったんだ。お兄さんたちは何で何人もいるの? 怖い人たちなの?」
「いや、怖いものではないよ」
「じゃあなぜ帰らなかったの? 返事しなかったのに」
「……まぁ、そうなんだけど。人を探してるんだよ。君のほかに誰かいない?」
「いないよ、何で知らない人の家で人を探すの? そんなのおかしい…」
「ちょっと155センチくらいのブロンドの女の子なんだけど、20歳くらい」
「知らない! 知ってても教えないけど」
「知ってたなら教えなさいよ」
エレーニがそう言いながらシーツを取り上げる。
「やめてよ! だってお兄さんたちがその子に酷いことするかもしれないよ。」
「どうやって?」
「そんなのわかんないよ! 釘をめちゃくちゃに体に打ち付けたりとかじゃないの!?」
「そういうことをする奴がこの家にはいるんですか?」
「し、知らない! そんなことする人この家にはいない! ぜ、絶対に知らない!」
「何動揺しだしてんの。アンタさっきからさぁ、オイ!」
「知らないったら知らない! もう帰ってよ!」
エレーニが業を煮やして怒鳴りつける。
「じゃあ、このベッドの上にある釘を打ち付けられまくってる子供の死体は何なんだよ!」
「僕は関係ないよ! 絶対に僕じゃないもん!」
エレーニがおい! 糞ジジイ! と怒鳴る。
ヒィ!
高い声の老人が両手をかぶって顔を隠しながら悲鳴を上げた。
ハンマーを持っている右手を震わせながら。
ガタっ
1階から物音。
エレーニが向かおうとするが、止めてここに居ろと伝える。
シャドウとベルシモックを彼女の護衛につけて
GHOSTは俺に同化させて1階に向かう。
***
エレーニ視点
ジョンが1階に向かった。
まったくこんなジジイと一緒に残すなんてどうかしてるわ。
ジョンの連れの人間なんだか人形なんだかわからないモノたちが
あたしを守るようにして近くに立っている。
「あんた達はあたしを手伝ってくれるのよね?」
……
返事はない…
まぁ、こいつらがしゃべったとこなんて見たことないから驚かないけど。
ベッドの上では子供が殺されているし、ジジイは机の下で震えているし。
ここからどうしたものか。
えーとシンディを探しに来たんだから、1階の物音…
そうね1階にいるのがシンディじゃないのなら
マスターベッドルームを見たらこの家の探索は終わりね。
アイツどこ行ったんだよ、本当に。心の中で独り言ちる。
この部屋にいても時間の無駄だし、マスターベッドルームにいこう。
部屋を出ていくと、人形男たちも少し遅れてついてきた。
あ、大男のほうは部屋に残るようだ。
あーハイハイ、あの爺さんを見張るってことね。
廊下奥の突き当りにある
部屋のドアノブに手をかける。
とドアノブが回らなかった。
ん?
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