第15話。ブラッディマリィ(前)
『クリムゾン』
「さぁやるか。まどろっこしい挨拶なんて
今更だろう」
『?????』
一息。
最短詠唱。
『クリムゾン』
「赤く染まれバカども。【
「血を見ろ、獲物だ。【
「嘲笑え高みで。【
『?????』
途端、続く怒涛。
まず、獰猛な鮫。
次に、いくつものハイエナ達。
最後に、一際大きなライオンの姿どもが、
そこには出来ていた。
『ダウト』
「いや、ライオンはデカすぎだろあれは」
『?????』
…訂正しよう。「ライオン」と称したものは、
それの数十倍の大きさをもってしてそこに
座していた。
更にダウトは言う。
『ダウト』
「それによお、今の最短詠唱の連続…」
『僕』
「同時詠唱、ですね」
『ダウト』
「ああ。
あれを真名も掴まないままやるって事は、」
『僕』
「つまり、」
『ダウト』
「…【
『僕』
「僕たちの殲滅優先ですねーーー。」
『ダウト』
「最後他人事になるな青少年」
『僕』
「だって、」
『ダウト』
「だってもクソもない。それに」
『僕』
「?」
『ダウト』
「準備が出来てないとでも思ったか青少年。
それに、美少女にはカッコつけないと、な」
『?????』
そして、
ダウトは其の場から下に向かって跳躍した。
『僕』『カノン』
「え、」
『カノン』
「え?ええ??逃げるんじゃないの???」
『僕』
「そうですよ!それに、まさか…」
『ダウト』
「応よ、考えるその通り!
…黒魔導士として、白魔導士を倒すぞ!」
『クリムゾン』
「ちょぉ馬鹿だな。喰らえ。拙者ごとな。
リカバーは頼むぞケイト」
『ケイト』
「仰せのままに」
『クリムゾン』
「逝け」
『?????』
暴力の、突。
『ダウト』
「総て、嘘となれ」
『?????』
虚実の、応。
ダウトは、真剣な表情と口調で、真名を完全に
掴んだ詠唱を行う。
『ダウト』
「【確かにこの世は鬱ろう。別に知らないな、
そんなこと。ただ、言わせてくれよ。
ヒーローで無くても護る力は在るって事を。
…特に、お姫様の為にな。」
『僕』
「おいコラ」
『ダウト』
『…
『?????』
這い出るは、黒ローブの少年によく似たモノ。
ただし大きさは段違い。
クリムゾンが呼び出したライオンのような
巨大な体躯をして、巨大な口を開いて対する
獲物を待ち受けていた。
『クリムゾン』
「パクリかよ」
『ダウト』
「オマージュと言ってほしいな」
『クリムゾン』
「真似てることに否定はしないのな」
『ダウト』
「割とものは言いようなんでな。それに、」
『クリムゾン』
「それに?」
『ダウト』
「割と美人相手にもカッコつけたい」
『クリムゾン』
「発情期の屑が。散れ」
『?????』
言うと、クリムゾンの
呑み込もうとする。
『ダウト』
「させるかよ、っと!」
『?????』
ダウトのほうは、
前に立った。
数か、質か。
…その前に。
黒ローブの少年も詠唱を行っていた。
『僕』
「…【なるべく確実に貫け。
『?????』
最短詠唱。
これだけでは二つの巨大なチカラの前では
塵も同然だろう。
が、
カノンも、唱えていた。
そう、
詠唱破棄の時間だ。
『カノン』
「わかってる」
「皆がこれを望んでないことを」
「それでも願わせて」
「平穏を」
「【
『?????』
カノンのモノが、出来る。
それは、目に見えないもの。
しかし、
確かに人々の平穏に必要なものだろう。
その目に見えないものは、クリムゾンとケイト
の生み出したものだけを包み込む。
それにクリムゾンとケイトは焦る。
『ケイト』
「げ、私達の攻撃の戦意喪失狙いか」
『クリムゾン』
「しかも、疾い。実験と違い本心を願ったな
あいつ」
『ケイト』
「こ、このままでは…」
『クリムゾン』
「ああ、大幅に弱体化したこちらの攻撃は
呑み込まれて、
そして、」
『ダウト』
「リーサルウェポンの青少年が役立つという
筋書きなのだよ白魔導士!」
『僕』
「いや、半分以上カノンの応援頼みだった
でしょうに」
『?????』
因みに。
カノンへの報酬は、カフェのデザート食べ放題
であった。(提案・ダウト。
財布・黒ローブの少年)
そして、
カノンは更に唱える。
『カノン』
「七つの矢」
「同時に放たれた出鱈目な願いは
成就されることはない」
「…でも、私は願うの。不承不承でも。
安易でなくても」
「ただ平穏を手にするために、黒い暴力は
白い一つの輝矢となる!」
「【
『?????』
…黒くバラバラに散ろうとしていた矢は、
拡散をやめた。代わりに一旦矢の突撃をやめ、
収束していく。
そして、光り輝く。
ダウトは言う。
『ダウト』
「こういっちゃあ何だけどさ。
真っ白な善意ほど迫力のあるものはないな」
『カノン』
「む!なぜかバカにされてる気配がするの!」
『ダウト』
「いやあ、お姫様はやれば凄いなあ、と」
『カノン』
「それなら、よし(あっさり)」
『ダウト』
「…チョロくね?(ボソリ)」
『僕』
「言ってる場合ですか。…いきますよ!」
『?????』
両者、叫びを上げ合う!
『クリムゾン』『ケイト』
「さっさと散れーッッ!!」
『僕』『カノン』『ダウト』
「させるかーっっ!!」
『?????』
それぞれの思惑が、それぞれの全力をもって、
ぶつかり合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます