第4話。それぞれの理由(分からない)
『?????』
そして、夜。とある廃棄場。
黒ローブの少年とカノンは、また相対する。
先に口を開いたのは、カノンの方だった。
『カノン』
「今日は、月が綺麗だね?」
『僕』
「天然でも冗談でもそれだけはやめとけ」
『カノン』
「?」
『僕』
「天然の方か。まあ良いんだけど」
『カノン』
「ところで、今日はどうするつもり?」
『僕』
「もう方策は決まってる……………」
僕は、カノンに向かって宣言する。
「先手必勝だ」
そして詠唱。
「【
同時。
僕とカノンの周りに黒い霧が立ち込め、
あっという間に僕達は視界不良に陥る。
「(最短での詠唱すると対象選べないのは
ホント不便だよな!まあこれは時間稼ぎ…)」
本命は此処から。集中。今度は関連する真名を
唱える!
「【真夜中に独りは寂しいだろう?ボクが傍に
居てあげよう、キミの最期に!
刹那。僕の右腕に激痛が走る。視界不良の傍には
黒く禍々しい大きな狼の姿をした「何か」が
居た。
その「何か」はムシャムシャと僕の右腕を噛んで居た。詠唱と同時に、喰われていた。
「ぐ…、ぅ…!、……【何を呆けている。
一夜の夢だろう。さっさと目覚めろ。
唱えて暫くすると、メキメキと音を立てて右腕が
、「生えて」きた。再生じゃない。
例えるなら生肌に近い義手だろう。
拳を握り握り。術式が成功したことを確認して、
僕はカノンのいる(はずの)方に向く。
連続で詠唱した代償は大きかったが、カノンも、
無事では済んでないはず。どうだ…?
と、
『カノン』
「いったいなあ、もう…!」
『僕』
僕の耳に怒気を孕んだカノンの声が聞こえる。
やはりどこか、致命傷ではないにしろ重傷は
負ったらしい。
「ふん。この間はこっぴどくやられてたからな。
お返しだよ」
『カノン』
「カノン、こんなにひどいことしてない…!」
『僕』
「黒魔導士の、しかも仇敵にそれを言う?
良いんだけどさあ、もう。真名は完成した」
『カノン』
「!」
『僕』
遅い。
「【眠れなくても眠れ。永遠に。決して二度と
目覚めるな。
斬。
仕留めた。連続詠唱の間に真名は探し終えてた。
代償なしでカノンの首だけ断ち切ったはずだ。
…はずだ。
動くなよ。動くなよ。形勢逆転はごめんだぜ?
……………。
「…、…、……」
カノンが動く気配はない。
やった
、
『ーー』
「やほ」
『僕』
「!?」
なんで。
ミーがここに。
『ミー』
「やー、かのが友達いないのとアタシが友達で
居続ける理由かんがえてごらんよ」
「白魔導士は他人との接触を日頃から
さけないといけない。その力は異質だけど、
必要不可欠なものだから」
「人々の日常を守る為にも」
「アタシ達、白魔導士は孤独同士で
コミュニティを組まないといけないのだよ、
ストーカー君」
『僕』
「…じゃ、総て演技だったのか?僕とカノンに
絡んだ事も、ダウトへの慕情も……………」
『ミー』
「うにゃ全部面白そうだからやっただけだよん」
『僕』
「は?!」
『ミー』
「ダウト…さまがアタシの超好みだったのも
あったし、全力で刹那的な日常を楽しもうと。
…仕事だけで人が生きていけると思う?」
『僕』
「…それに対してだけは首肯しかねるがな」
僕はカノンを……………、
それはそれだ。
「カノンは知ってるだろうか、君の正体を」
『ミー』
「んーん。アタシがダウトさまの詳細を
知らないのと同じように、かのはアタシの
正体を知らない。知っているとすれば、
たまにポロッと白魔導士の事情がこぼれる
ことくらいかな」
『僕』
割と危ない橋渡っているじゃねえか。
…まあ、ダウトの事を分からないのは僥倖だ。
懸念が一つ減った。やる事は、一つに決まった。
こいつも、仕留める。
「【散々たる……………】」
『ミー』
「【知ってるよとっくに。おそすぎ。
『僕』
メッ、ギャア。
「ぐ、ぅ、…!?」
何かが僕の体に追突した音は後で聞こえた。
それよりも、身体の節々…どころか全身に近い
骨が多数折れた音が聞こえ、僕は錯乱する。
「て、っ、めえ…!」
『ミー』
「ストーカー君も、かのに似たことを
したんだから、同罪。これでも、てかげん」
『僕』
「これでかよ…!」
『ミー』
「頭蓋骨、ねらわなかったでしょ」
『僕』
「?」
『ミー』
「言っておくけど、かのの首、きれてないから。
アタシが前もって詠唱しておいたから。
これで頭意外無事だから、後で【
すればいい話だから。それじゃ、かのは
おもちかえり〜」
『?????』
そう言うと、かのは黒ローブの少年の目の前から
消えた。
『僕』
「ま、待て……!」
待ってくれないのは承知で言ってはみるが、
ミーである者が何かを担いで去っていく音を
聞いていくだけだった…。
「…、!、…くそっ!」
かろうじて動く右腕で(おそらく生体反応の
ある部位をミーは狙ったのだろう。今の右腕は
ミイラのようなものだったから、無事だった)
地面を叩き、僕は悪態をついた。
「途中までは、良かったのに、どうして!」
『ーーー』
「それはお前が未熟だろうがよ青少年」
『僕』
声の主が誰なのかはすぐわかった。ダウトだ。
「…見てたんですね、総て」
『ダウト』
「まーな。途中まで優勢だったのもな。
ただ、な」
『僕』
「?」
『ダウト』
「事実を言う」
刹那の間。
「カノンは戦闘不能になった。確実に」
『僕』
「!?」
僕は驚くが、ダウトはそれに構わなかった。
『ダウト』
「【人狼】で確かにカノンは仕留めた」
「だが…その後がおかしい」
「カノンの身体が蠢くのが聞こえたからだ」
「ミーは、詠唱していた、と言っていたが」
「事実は、異なる。詠唱は、していない」
「何のために嘘をついたのかは定かではないが、
言えることは、ミーは戦闘不能になった事を
隠したがっていた。これだけは本物だろう」
「さて」
『?????』
そこで言葉を切り、ダウトは黒ローブの少年を
肩に担いだ。
黒ローブの少年は全身に走る激痛に身悶えした。
『僕』
「いだだだだだ!?」
『ダウト』
「我慢せい青少年。お前も首は繋がっているの
だから【
『僕』
「だからってこれは…!」
『ダウト』
「今回も負けたんだよ、青少年」
『僕』
「?」
『ダウト』
「夕霧カノンは今日も生き延びる。
どんな経過を辿ったとしてもだ。
それはオレ達が望むことじゃない」
「青少年」
「方針を少し変えよう」
「夕霧カノンが「詠唱破棄」できるのに今日は
しなかった理由を考えろ」
「その上で「詠唱破棄」の出来る理由を考えろ」
「いいな」
『僕』
「…、…、……」
分かっている。僕の応えは、一つだけ。
「はい。ダウトさん」
また、明日も僕の日常は非日常のままだ。
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