第2話。「素敵」な日常
『僕』
「枝葉末節な報告。翌日だね」
「僕は学生じゃない。歳は聞かないであげて」
「置いといて」
「夕霧カノンは普段は極々普通の学生で
今日も朝から一人で歩いて登校している」
「否。」
「友人が、一人、待っていた」
『ーー』
「おはろー。かの。今日は晴れやかな表情だね」
『カノン』
「おはよー。そうだね、昨日は悪党を思い切り
ぶっ飛ばせたからね」
『ーー』
「あくとう?」
『カノン』
「あ、ゲームの話ねー(あっさり)」
『ーー』
「そか。ゲームの話かー(あっさり)」
『僕』
「二人は何だか雰囲気が似ていた。何と言うか
…ほんわかとしていると言うか」
「その中だけ、平和な世界が築かれていると
言うか」
「…世界を脅かす者が何を言うのかだって?
余計なお世話だよ」
「彼女は
「周囲は彼女のことを猫っぽいと称し「ミー」
と愛称で呼んでいた」
「二人はまた話し出す」
『カノン』
「ミーは?今日も何だか眠そう」
『ミー』
「んー。なんともないよ、このくらい。
深夜アニメ見ていただけだから」
『カノン』
「睡眠時間なんじかん?」
『ミー』
「いちじかん」
『カノン』
「いち学生の睡眠時間じゃないの」
『ミー』
「大丈夫!授業でねる。きょうは体育もない」
『カノン』
「それもどうかとおもうの。ミー。友人だから
いう。体育ないと勘違いして倒れていた時も
あったミーだから言う。
推しを増やすの辞めよう」
『ミー』
「やだ~〇〇様の続編も決まってアタシは
今日も明るく生きていけるんだ〜」
『カノン』
「そのうち過労であの世で元気にしてるかも…」
『ミー』
「そのときは、そのとき!」
『カノン』
「やだ。カノンは、ミーにそばに居て欲しい」
『僕』
「そう言うと二人は、どちらからともなく、
からからと朗らかに笑い合っていた」
「とてつもなく平和な、女子高生の、日常の朝」
「…そろそろ、独り言もいいだろう」
『?????』
そう言うと黒ローブの少年は、歩き出す。
ゆっくりと、ゆっくりと。
カノンとミーの傍、近くまで。
『僕』
「……………」
『?????』
通り、
過ぎる。
カノンは、それに気づいた。
『カノン』
「!、!、……」
『ミー』
「どした、かの」
『カノン』
「なんでもないよ。…うん。カノンは平気」
『ミー』
「んー?まあいいけど。それより学校いこう」
『カノン』
「うん、……、」
『僕』
「わかる」
「カノンが僕に集中していることに」
「さあ喜べ世界よ。今日もまた世界は、善人と
悪人で成り立っているのだ、と」
「カノンが悪人を、しっかりと認識している、
このことに」
******
『僕』
「まあまだこうやって不法侵入してるんだけど」
「今日はミーが言っていた通りに、座学中心の
スケジュールになっている」
「移動教室のないことはいいことだ」
「監視がやりやすい」
『?????』
黒ローブの少年はドーナツ片手にもぐもぐ
しながら独り言を呟いていた(汚い)。
丁度、今日は晴天。
黒ローブの少年の監視はとてもやりやすかった。
『僕』
「でも、こうして見てだけ居ると眠たくなって
来るな…何か対策ないかな、と」
『ーー』
「……………じゃ、一緒に寝る?」
『僕』
「?、…!、後ろ!?」
『ーー』
「どもー。ミーです」
『僕』
「なんで?!今日は歩き回れる体力ないだろう
!!」
『ミー』
「ふっふっふ。あなどってはこまるのだよん
おとめには昼寝するためならどんな努力も
いとわないときがあるのだよ」
『僕』
「いらない努力!」
『ミー』
「それよりなにやっているのかなストーカー君」
『僕』
「…えーと」
『?????』
黒ローブの少年はとても困った様子で頭をかいた
さて、どうしたものか、と。
『僕』
!、そうだ、これだ。
「いやあ、僕はカノンの事が好きになってねえ」
「いつも何をしても彼女の事が気になってさ、
仕方ない訳。そしてとうとう行動に移した訳」
「…そんな理由じゃ、ダメかな?」
そして頬を赤らめる。…嘘をべらべら喋るのは
好みじゃないし、最後は嘘でもなんでもない。
恥ずいわ。
『ダウト』
「嘘を信じ込させるにはまず「成り切る」事だ」
「ただ口で信じ込ませようとするにはオレ達も
普段から怪しすぎる。じゃあ何をするか。
…真実を一つは織り交ぜる事」
「真実とは何ぞや」
「オレは感情とそれに伴う生理的反応だと思う。
…それは嘘だけでは成し得ないと思っている」
「感情と生理的反応とは何ぞや」
「感情を、夢と置き換えるなら。
生理的反応はそれに対する素直な情熱と感動」
「…「素直」な自分に、「成り切る」んだ」
「何か「成り切れる」自分を見つければ、
人は成長するし、様々な高みに近づく」
「それと同時に、世界に嘘を尽くし始めると
思っているがな。いくら御託を並べても、
「成り切る」事は自分ではない誰かになる事」
「その時点で立派な詐欺師だよ、人なんて」
『?????』
黒ローブの少年はそういって黄昏た瞳をした
ダウトの様子と言葉を回想しつつも、
『僕』
…帰ってダメ?僕。
『?????』
そんなことを思っていた。
と、ミーが再度口を開く。
『ミー』
「ほー。そうかそうか。かのがすきなの。ほー」
『僕』
「そ、そうさ。だから一度の過ちくらいは、さ」
『ミー』
「ふーん」
『僕』
「……………」
『ミー』
「……………」
『僕』
…やっぱり帰ってダメ?僕。
『?????』
弱い。
と、ミーは意外な反応を返した。
『ミー』
「いいね。ひとをすきになるのはいいことだー」
『僕』
「!」
『ミー』
「アタシも、友達の少ないカノンのことは
きになってたの。きみはあやしいけど、
たぶんわるいひとではなさそうだしー」
『僕』
「だ、だろう?」
『ミー』
「うん。アタシも、好感度あっぷ。いいね。
いいね。ぜひ、かののことを気にかけてね」
『僕』
「あ、ありがとう…!」
やった、この女ちょろい。
『?????』
と、黒ローブの少年が内心ほくそ笑んでいると、
更に意外な反応をミーは行った。
『ミー』
「それじゃ、お祝いだね。どうせなら面と
向かって話したほうがいいでしょ?
アタシもいっしょにいるからさー。
よーし、きょうはアタシのおごりだー」
『僕』
「え」
******
『僕』
「枝葉末節な報告。放課後。とあるカフェにて」
『カノン』
「何を虚空に向かって話しているの?」
『僕』
「胸中を察して欲しい」
『カノン』
「胸中?」
『僕』
「そう。どうしてこうなった」
『カノン』
「カノンもそれは思うよ。何があったの?」
『?????』
知らねえよ。黒ローブの少年は胸中で毒づいた。
そして軽く歯ぎしりする。
だが表情に出す訳にはいかなかった。
『僕』
今の自分は、カノンに想いを寄せる一途な男。
普段はコロシアイをしている仲であっても。
成り切って見せようじゃないか。
と、カフェの中からミーが軽く走って出てきた。
『ミー』
「お待たせー。外の席の人は中のマスターに
一々注文しなきゃなんてめんどーだよねー。
で。おふたりさん。おはなしはどうかなー」
『僕』『カノン』
「……………」
『?????』
そこには、とてもキラキラした眼をしたミーの姿
があった。
黒ローブの少年とカノンは目配せする。
『カノン』
「(どうする?どうごまかす?)」
『僕』
「(どうって。あくまで僕とは初対面で
済ませるしかないんじゃないのか)」
『カノン』
「(初対面?もう何回もコロシアイしてるのに)」
『僕』
「(それでも!…いいか、僕達は今ここで仲を
深め合う関係!それでいいの!)」
『カノン』
「(わ、わかった。カノン、頑張ってみる)」
『僕』
「(よし!)」
アイコンタクト終わり。商談成立。
では茶番の始まりだ。
『ーーーー』
「お待たせしました、ご注文の品になります」
『?????』
と、三人のテーブルにカチャリカチャリと
軽食と珈琲などが次々と痩せぎすな男性が
いつしか並べ始めていた。そして、何故か
黒ローブの少年に眼を合わせた。
同情の眼差しだった。
『僕』
「(
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