第10章:揺れる未来と決断の時

 新たな困難


 るるちの配信活動が軌道に乗り始めた矢先、新たな問題が彼女を襲った。ある日、匿名の視聴者から不穏なメッセージが届いたのだ。

「過去の配信データ、全部持ってるからな。お前の素性、完全に暴いてやる。」

 そのメッセージに、るるちは身震いした。慎重に行動しているつもりだったが、過去が露呈するかもしれないという恐怖が彼女を支配した。

「どうしよう……。」

 配信後、るるちは晴人に相談することを決めた。

「霧島さん、少し時間いいですか?」


 支え


 その夜、るるちは晴人の部屋を訪れ、スマホの画面を見せた。窓の外には冷たい夜風が街灯を揺らし、冬の静けさが辺りを包んでいた。

「こんなメッセージが来て……。どうしたらいいか分からなくて。」

 晴人は画面を見つめ、眉をひそめた。白い湯気を立てるコーヒーをテーブルに置き、冷静に言葉を選んだ。

「甘坂さん、これは悪質な脅迫ですね。すぐに警察に相談しましょう。」

「でも、こんなことで警察が動いてくれるのかな……。」

「動いてもらうために、まずは記録を残すことが大事です。メッセージのスクショを保存して、受信日時や相手のアカウント情報も記録しておきましょう。いざとなったらこんな時代です、開示請求もできます。」

 晴人の冷静なアドバイスに、るるちは少しだけ落ち着きを取り戻した。

「ありがとうございます。霧島さんがいてくれると、心強いです。」

「俺も甘坂さんの力になりたいだけです。」

 その言葉に、るるちは小さく微笑んだ。


 再び対策を考える


 翌日、るるちは警察に相談し、事態を説明した。警察はメッセージの記録を確認し、可能な限りの対策を講じると約束してくれた。

 しかし、完全に不安が消えたわけではなかった。るるちは晴人に言った。

「霧島さん、これ以上みんなに迷惑をかけるくらいなら、配信をやめたほうがいいのかなって思ってます。」

 晴人はその言葉に強く首を振った。

「甘坂さん、そんなことはありません。たくさんの人があなたの配信を楽しみにしてるんです。それに、脅迫する人間のせいであなたの夢を諦めるなんて、絶対に悔しいと思います。」

 るるちはその言葉に目を潤ませながら、静かに頷いた。

「そうですね……。私、もう少し頑張ってみます。」


 晴人の成長


 一方、晴人もまた職場での責任が増え続けていた。プロジェクトの中盤に差し掛かり、重要なプレゼンを任されることになった彼は、全力で準備を進めていた。

「霧島さん、頼りにしてますよ!」

 上司や同僚の期待に応えようと奮闘する中で、晴人はるるちの言葉を思い出していた。

「霧島さんなら絶対大丈夫です!」

 プレゼン当日、緊張しながらも晴人はプロジェクトの概要を丁寧に説明し、質疑応答にも冷静に対応した。その結果、プロジェクトは上層部から高い評価を受け、晴人はさらなる信頼を得ることができた。

「俺も少しは前に進めてるのかな……。」

 彼はるるちにメッセージを送った。

「甘坂さんのおかげで、今日のプレゼンがうまくいきました。本当にありがとう。」


 新たな希望


 るるちは、晴人の成功を聞いて心から喜んでいた。自分ももう一度立ち上がるために、ある新しい企画を思いついた。

「次の配信は、みんなで過去の思い出を振り返る特別回にしよう。」

 視聴者と一緒に歩んできた道を振り返りつつ、新たなスタートを切るきっかけにする。その企画はるるち自身にとっても再出発の象徴だった。

 一方で、晴人も自分自身の人生に新たな目標を見出していた。

「俺も、もっと自分の可能性を広げてみよう。」

 二人はそれぞれの場所で挑戦を続けながら、互いを励まし合う日々を送っていた。

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