第6章:試される絆
配信活動の危機
るるちと霧島晴人が共に挑戦した新企画は、視聴者から概ね好評を得ていた。しかし、配信活動が盛り上がる一方で、予想外の問題が彼女たちを襲った。
お盆の時期、夜風がほのかに涼しさを運ぶ中、晴人はアイスティーを片手に共有スペースの窓辺に立っていた。遠くから聞こえる盆踊りの太鼓の音が、夏の終わりを静かに告げていた。
「霧島さん、少し話せますか?」
振り向くと、るるちがいつもの元気さとは対照的な、硬い表情で立っていた。白いノースリーブのシャツに淡いブルーのフリルスカートを合わせ、髪は緩くポニーテールにまとめられているが、その目には不安の色が浮かんでいた。
「もちろん。何かあったんですか?」
るるちは手に持っていたスマホを差し出した。画面には匿名掲示板のスレッドが表示されており、そこにはるるちを中傷する書き込みが並んでいた。
「最近、こういうのが増えてきて……。前から批判はあったけど、今回はちょっと酷くて……。」
晴人はその書き込みを目にし、怒りを覚えた。
「こんなの放っておけばいいんですよ。気にするだけ無駄です。」
「そう思いたいんですけど……。やっぱり読むとどうしても心に刺さっちゃって。」
るるちは小さく肩を落とした。その姿に、晴人はどう言葉をかければいいのか迷った。
「何かできることがあれば、俺に言ってください。甘坂さんには笑っていてほしいから。」
その言葉に、るるちは少しだけ微笑んだ。
「ありがとう、霧島さん。でも、これは自分で乗り越えなきゃいけないことだよね。」
情報流出
数日後、るるちはさらに深刻な問題を抱えることになった。SNSを通じて「甘坂るる」の本名がそのまま活動名であるらしいという情報が拡散され、それが引き金となって居住地やプライベートな情報まで特定される事態に発展してしまった。それだけでなく、「彼氏がいるらしい」という根拠のない噂も流れ始め、るるちに執着する一部の視聴者が過剰な反応を示していた。
「霧島さん……どうしよう……。」
るるちは震える声で晴人に相談した。
「ついに本名と住所が晒されちゃったみたいで……。配信中に私のプライベートなことをコメントで言われて、それが本当だったんです。」
晴人はその話に驚き、すぐにるるちを安心させようとした。
「大丈夫です。すぐに警察に相談しましょう。そして、SNSのアカウントもしばらく非公開にして、配信も一旦休止したほうがいい。」
るるちは涙をこらえながら頷いた。
「そうですね……怖いけど、ちゃんと対策を取らないと……。」
ストーカーの影
事態はさらに悪化した。ある日、るるちがマンションの共有スペースで奇妙な男に声をかけられた。
「甘坂るるさんですよね? いつも配信見てますよ。」
一見普通のファンのようだが、その目には異常な執着が感じられた。
「すみません、急いでるので。」
るるちは恐怖心を抑えながらその場を離れたが、その男が後をつけてくる気配を感じた。
マンションの廊下に入ると、彼女は慌てて晴人の部屋のドアをノックした。
「霧島さん! 開けてください!」
晴人がドアを開けると、るるちは怯えた表情で中に飛び込んできた。
「追いかけられてます……。」
晴人はすぐにドアを閉め、鍵をかけた。
「落ち着いてください。大丈夫、ここは安全です。」
二人で考える対策
その夜、二人は警察に相談し、ストーカー行為について被害届を出すことを決めた。また、るるちは一旦実家に帰ることを検討し、配信活動も休止する決意を固めた。
「霧島さん、本当に迷惑かけてごめんなさい……。」
「何言ってるんですか。俺は甘坂さんが無事でいることが一番大事なんです。」
るるちはその言葉に涙を流した。
「ありがとう……霧島さんがいてくれて、本当に良かった。」
新たな一歩に向けて
数日後、るるちは実家に戻り、安全が確保された環境で落ち着きを取り戻した。晴人は彼女を励まし続け、彼女の復帰を心待ちにしていた。
「絶対に戻ってきます。もっと強くなって、またみんなに笑顔を届けたいです。」
その言葉を聞いた晴人は静かに頷いた。
「待ってますよ。甘坂さんが戻ってくるのを。」
るるちは力強く頷き、絶対に戻ることを心の中で誓った。
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