第5章:未来を見据えた選択
配信者としての挑戦
るるちが新しい企画のアイデアを考え始めたことで、彼女の配信活動に少しずつ変化が見え始めていた。霧島晴人もまた、彼女に刺激をうけ、自分自身の役割を見つけようとしていた。
真夏の日差しがマンションの廊下を照らし、アスファルトの熱がゆらゆらと揺れるように見える午後。晴人はアイスコーヒーのカップを手に持ちながら、共有スペースの涼しい風を感じていた。
「霧島さん、これ見てください!」
るるちは白いTシャツにキャップを合わせたラフな姿で、スマホを掲げながら駆け寄ってきた。短めのパンツから伸びる日焼けした足が夏の陽射しに輝いている。
「何ですか?」
「今度、視聴者の人と一緒にゲームを作る配信をしてみようと思うんです!」
「ゲームを作る?」
「はい! 私も勉強しながらだけど、視聴者のみんなと一緒に何か形に残せたら楽しいかなって思って。」
晴人は感心したように頷いた。
「それは面白そうですね。でも、結構大変そうじゃないですか?」
「うん、だから霧島さんにも手伝ってほしいなって思って!」
突然の依頼に、晴人は一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。
「分かりました。俺にできることなら手伝いますよ。」
「やった! ありがとうございます!」
るるちは満面の笑顔を浮かべ、その瞳には新しい挑戦への期待が輝いていた。
配信に込める思い
企画の準備が進む中、るるちはふとした瞬間に深刻な表情を見せることがあった。ある夜、晴人がそのことを尋ねた。
「甘坂さん、最近ちょっと疲れてるように見えますけど、大丈夫ですか?」
るるちは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、静かに頷いた。
「実は……この企画が終わったら、少し配信をお休みしようと思ってるんです。」
「お休み?」
「うん。最近、自分のやりたいことと視聴者の期待の間で迷うことが増えてきて……。一度、少しだけ距離を置いて考え直したいなって。」
晴人はその言葉に驚いた。
「でも、甘坂さんがいなくなったら寂しい人がたくさんいますよ。」
「私もそう思う。でも、中途半端な気持ちで続けるのは、応援してくれてる人たちに失礼だから。」
るるちは少し寂しそうに微笑んだ。
「だから、この企画には全力を尽くしたいんです。自分が本当にやりたいことを見つけるためにも。」
晴人はその言葉に真剣な表情で頷いた。
「分かりました。俺もできる限り手伝います。絶対に成功させましょう。」
二人三脚の挑戦
準備が進む中、るるちと晴人は一緒に長時間作業することが増えた。るるちが配信の構成を考え、晴人が技術的なサポートをする中で、二人の絆はさらに深まっていった。
「霧島さん、いつもありがとうございます。霧島さんがいなかったら、この企画絶対無理だったと思います。」
「そんなことないですよ。甘坂さんの情熱があるから、俺も頑張れるんです。」
るるちはその言葉に少し頬を赤らめた。
「……そう言ってもらえると、本当に嬉しいです。」
視聴者とのつながり
企画の初回配信が始まる日、るるちは少し緊張した様子で晴人に相談した。
「霧島さん、もしこれが失敗したら……って考えたら、怖くなっちゃって。」
晴人は穏やかに笑いながら言った。
「大丈夫ですよ。甘坂さんらしくやれば、きっとみんな応援してくれます。」
その言葉に勇気をもらい、るるちは画面越しに明るい笑顔を見せた。
「みんな、こんにちは!今日は一緒に新しい挑戦を始めたいと思います!」
配信が始まり、視聴者からの温かいコメントが次々と流れる中、るるちは自信を取り戻していった。
「やっぱり、私はみんなとこうして何かを作るのが好きなんだな……。」
新しい一歩
配信が終わり、るるちは晴人に向き直った。
「霧島さん、本当にありがとうございました。おかげで、もう少し続けてみようって思えました。」
「それならよかったです。俺も甘坂さんのおかげで少し前向きになれましたから。」
二人は静かに微笑み合いながら、新しい一歩を踏み出していくのだった。
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