第4章:互いを支える絆
配信者としての葛藤
るるちが自分の配信活動を告白してから、晴人とるるちの関係はさらに深まっていた。しかし、知らない一面をしっていくことで、るるちの抱える悩みも徐々に明らかになっていった。
夏の夜、湿気を含んだ空気が静かに漂う中、晴人はマンションの共有スペースで缶コーヒーを片手に座っていた。夜風がゆっくりと通り抜けると、缶の冷たさが指先に心地よい感触を伝える。
「霧島さん、こんばんは。」
その声に顔を上げると、るるちがスポーティなタンクトップにデニムショートパンツという動きやすい格好で、軽く手を振りながら近づいてきた。彼女の額には汗が少し浮かび、髪は後ろでまとめられていた。
「こんばんは。どうしたんですか?」
「ちょっと一息つこうと思って。最近、配信のことで考えることが多くて。」
晴人は驚いた。るるちはいつも明るく元気な姿を見せていたため、忙しくはあれど、大きな悩みがあるとは思えなかった。だが、時折見せる曇った表情を思い浮かべ、どこか納得していた。
「配信、何かあったんですか?」
「そういうわけじゃないんです。でも、もっと頑張らなきゃって思う反面、プレッシャーも増えてて……。」
彼女の言葉に、晴人は真剣な表情で耳を傾けた。
「無理しなくてもいいと思いますよ。甘坂さんの自然体が好きな人たちがたくさんいるはずですから。」
その言葉に、るるちは少し驚いたような顔をした。
「霧島さん、そう思ってくれるんですね……。ありがとうございます。」
配信活動の悩み
ある日、るるちは晴人にこんな話を切り出した。
「霧島さん、私、ずっと迷ってることがあるんです。」
「迷ってる?」
「はい。今のままの配信活動でいいのかどうか……って。」
晴人は、るるちが普段見せる明るい姿とのギャップに少し戸惑った。配信者としての笑顔の裏側には、きっと自分には想像もつかない苦労があるのだろうと感じた。
「なんでそう思うんですか?」
「うーん、最近コメントとかでちょっときついことを言われることが増えちゃって……。私のやり方が間違ってるのかなって考えることが多くなったんです。」
その言葉に晴人は少し考え込んだ。
「それでも、甘坂さんの配信を楽しみにしてる人はたくさんいるんじゃないですか?」
「そう思いたいですけど……どうしても悪い意見ばかりに目が行っちゃって。」
「そういうものかもしれませんね……。でも、優しく手を差し伸べてくれてる人の声にももっと耳を傾けてみても良いかと……。傷つけようとしてる人より遥かに多いはずなので……。」
るるちはその言葉に少し考え込み、そしてふっと微笑んだ。
「そうですね。ありがとうございます、霧島さん。」
新しい挑戦
ある日、るるちは突然こんな提案をしてきた。
「霧島さん、今度私の配信の企画を一緒に考えてみませんか?」
「企画?」
「はい! 今までとは少し違う方向に挑戦してみたいなって思ってて。でも、一人だとアイデアが限られちゃうので、霧島さんの意見を聞けたら嬉しいなって。」
晴人は驚きながらも、その提案に少し興味を持った。
「俺で力になれるなら……。」
「やった! ありがとうございます!」
るるちは明るい笑顔を浮かべ、嬉しそうに手を合わせた。
共に歩む未来
るるちと晴人は互いに支え合いながら、新しい挑戦を通じて前向きな日々を送るようになっていった。
「霧島さん、最近ちょっと明るくなった気がしますね。」
「そうですか? 甘坂さんのおかげですよ。」
「それなら、お互いさまですね!」
二人は笑い合いながら、また新たな日常へと戻っていった。夏の日差しが建物の影を濃く落としながらも、二人の間には希望の光が差し込んでいた。
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