第3章:秘密に触れる瞬間
配信者であることの告白
ゲームを通じて少しずつ距離を縮めていく霧島晴人と甘坂るる。初夏の午後、青空には眩しい日差しが降り注ぎ、涼やかな風がマンションの共有スペースを心地よく通り抜けていた。
るるちは薄手のスポーティなパーカーに、ハイウエストのデニムショートパンツを合わせたカジュアルな服装で、コーヒーカップを手に座っていた。爽やかな初夏の風に彼女のポニーテールが揺れ、少し日焼けした腕が健康的な印象を与えていた。その表情にはいつもよりほんの少し緊張が混じっている。
「霧島さん、私、ちょっと話したいことがあるんです。」
彼女が口を開いた瞬間、晴人はカップを置き、真剣な眼差しを向けた。
「実は……私、VTuberやってるんです。」
その告白に、晴人は一瞬耳を疑った。
「VTuber……?まさか……るるち?」
るるちは驚いたように目を見開いた。
「どうして分かったんですか?」
晴人は少し頬を赤らめながら、苦笑いを浮かべた。
「いや、その声……どこかで聞いたことがあると思ってたんです。」
その答えに、るるちは恥ずかしそうに笑ったが、少しだけ真面目な表情を浮かべた。
「……そうですよね。そもそも、甘坂るるって名前……そのままですしね……。まったく隠す気がない天然さんって言われそうです。」
晴人も思わず笑ってしまった。
「そりゃ、活動名が本名だとさすがに気づきますよ。それもるるちらしいっていうか……。」
るるちは微笑みながら続けた。
「でも、私にとって"甘坂るる"はそのまま私なんです。本当の自分を出すって決めたから、名前もそのままにしました。でも、それがちょっと仇になったかもしれませんね。」
「それでも、甘坂さんらしいと思いますよ。その自然体が好きな人もたくさんいるはずです。」
「ありがとうございます、霧島さん。」
晴人の思い
るるちの言葉を聞いた晴人は、自分自身のことを思い返していた。明るい日差しが彼の横顔を照らし、その目にはどこか遠い記憶を辿るような深みがあった。
「俺も少し前、仕事で悩んで会社を辞めたんです。その時、あなたの配信に救われました。」
「えっ……?」
るるちは驚いたように晴人を見つめた。
「甘坂さん――いや、るるちの配信を見てると、なんだか元気をもらえるんです。頑張ろうって思える。るるちがなにか困ったなら、何か力になりたい。」
晴人の真剣な言葉に、るるちは目を潤ませた。
「そんな風に思ってくれてたんですね……。ありがとうございます。霧島さんがそう言ってくれるだけで、これからも配信頑張れます!」
距離を縮める二人
その夜、二人はマンションの屋上で星空を眺めながら話を続けた。夏の匂いを含んだ風が静かに吹き抜け、空には無数の星がきらめいていた。
るるちはパーカーの紐に手をやりながら、晴人に視線を向けた。
「霧島さん……、いろいろあったんですね。」
「まあ、正直まだ完全には立ち直れてないです。でも、こうして話せる人がいるだけで救われる気がします。」
「私も同じです。なにか困ったら霧島さんに相談してもいいですか?」
「もちろん。俺も甘坂さんに頼るかもしれませんけどね。」
その言葉に、るるちは笑顔を浮かべた。
「頼られるのって、悪くないですね。」
二人の言葉が穏やかに交わされる中、星明かりが二人の間に優しい影を落としていた。
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