第3話 ギルドの英雄たち

 翌日、ギルドの英雄達を集めたスペシャルパーティが、火蜥蜴サラマンダーの討伐に向かった。そのダンジョン入口の前では、それぞれのファン達で賑わっている。


「今日は特別クエスト実施の為、許可が無い人は入れませーん! そこの貴女、許可書は??――洞窟蜘蛛の討伐ですか。どうぞご安全に」


 呼びとめられ、静かに許可書を見せると、容易たやすくダンジョンに潜入できた。この為にクエストを選んでいたのだ! 今日は私にとって一番の楽しみと言っても過言ではない。私は気配を殺し彼らの後を追う。


 ノクトは冷静に状況を把握し、ブラウンの髪を乱すこともなく華麗にモンスターを倒してゆく。


(あ~~!今日もカッコいいなぁ……臨時パーティーとは思えない連携!ああ、あの冷たい瞳に見つめられたら限界化してしまう!……ま!見つめられる事はないでしょうけど)


 彼等は順調に火蜥蜴の元へと近づいてゆく。私も物陰から双眼鏡で様子を見た。


「偵察ご苦労」

「ああ。ノクト、この先に火蜥蜴サラマンダーが5匹。他にモンスターは居なかった」

「よし、装備を整えたら向かおう」


(5匹……昨日は6匹居たけどナゼ?……)


 私も彼らの後を追い、ダンジョンを進んだ。


 ◆


「よし、あと2匹! 気を抜くな!!」

「「「おう!!」」」


 彼等は華麗に火蜥蜴を狩るが、様子がおかしい。火蜥蜴以外のモンスターがいない。それに心なしか火蜥蜴の動きが鈍い。何かに怯えてる……


「よし! あと1匹!!」


 その時、深層に繋がる奥の通路からドラゴンが現れた。口には火蜥蜴を咥えていたが、それを生々しい音を立てて食べてしまう。ひえっ!


火竜ファイアドラゴンだと!!」


(だから火蜥蜴は、深層から逃げて来たのね。ドラゴンなんてSS級じゃん! 逃げないと…… あっ!!)


 みんなが火竜に意識を向けた一瞬を狙い、火蜥蜴がノクト目掛けて攻撃を仕掛けた。このままではまともに喰らってしまう。


石槍ロックスパイク!!」


 岩の槍が地面から生え火蜥蜴を串刺しにした。安心したのも束の間、ノクトと目が合ってしまった。


「誰だ!!」

(ひゃん! マズイ!)


 私は踵を返し逃げ出した。


「ノクト!! でかした!! 火竜を狩るぞ!!!」

「あ、ああ……」


(あぁぁぁ……目が合った。どうしよう! とりあえずこのローブと杖はもう使えない)


 私は息を切らし家に戻り服を着替えた。杖も新調したばかりだが、暫くは別の物を使おう。冒険者になりたての時に買った杖をクロークから引っ張り出した。落ち着け……落ち着け……


 夕方こっそりギルドへ向かうと、お祭り騒ぎだった。


「ドラゴンを討伐したらしいぞ!」

「途中、負傷者も助けたらしい。さすが英雄パーティ!!」


 彼らは火蜥蜴と火竜の討伐に成功したようだ。私は受付のリーナさんに話しかけた。


「すごい盛り上がりですね。私も討伐終わりました。成果物です」

「カノンさんお疲れ様です。まさか火竜まで退治してしまうとは彼らはすごいです。あ! ノクトさんが個人的にクエストをギルドに依頼したので、よかったら掲示板を見てください。カノンさんなら出来ると思うので」


 ノクトがギルドに依頼? 珍しい事も有るものだ。


「はい、報奨金です。受取のサインをお願いします。彼等、今日はギルドの酒場で打ち上げするみたいですよ」


「本当ですか! 行ってみます!」


 私は、温かくなった財布を抱え、受付を後にするのであった。


 

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