第2話 孤独の魔術師
ダンジョンはパーティーを組んで冒険をするのがセオリーであるが……
私は
ギルドの仲介を受けてパーティに加入した時期もあったが、そこで酷い目に遭ってからは独りで冒険している。なので5年も孤独に冒険しているうちに、自然と必要な力は磨かれていった。
寂しくないかと言われれば、始めは寂しかったけど、独りは気ままに冒険できて自由度が高いのが魅力だ。それに今の私には目的が有るので寂しくない。
「トラップ発見!」
他の冒険者を妨害するために罠を仕掛ける悪い奴が居るのだ。私はそういった
ちなみにこれは私のクエストでは無い。趣味だ。
憧れのノクトが罠で怪我したら大変だ!
この活動は誰も知らない。知られてはいけない! ヘタしたら彼のプライドを傷付けかねない。
「それにしても今日は罠が多いな、誰がこんな事を……」
彼がダンジョンに潜ると噂される時は特に増える。嫉妬と悪意は恐ろしい。
私は奥へ進む。時にモンスターを倒し、
(このフロアはモンスターが多いなぁ。火蜥蜴の群れと言っても数は多くない……6頭。深層から来たのか。深層で何かあった? まぁ可哀そうだけど明日退治されてね)
確認も終わり、私は別の場所へ向かう。受注したクエストを片づける! 増え過ぎた洞窟蜘蛛の退治に向う。
巨大なクモたちがひしめくゾーンにやって来た。夜の蜘蛛たちは活発だ。巣にかかった餌を楽しんでいるようだった。またもや双眼鏡で確認する。
(12匹……半分狩ればいいかな?)
「
杖を構え狙いを定めて、氷の槍を蜘蛛目掛けて投げた。槍は見事命中し蜘蛛を貫く。攻撃を喰らわなかった蜘蛛たちは驚き、洞窟の奥へと逃げて行った。
私は火を灯し、蜘蛛の巣を焼き切りながら蜘蛛の亡骸の元へ向かう。この糸に絡まるのをみんな嫌がるのでこのクエストは人気が無いのだ。討伐の証にモンスターを解体して必要な部位をはぎ取る。こんな作業も慣れてしまった。
「
蜘蛛の巣に大きな糸の塊が3つ。人間が入りそうな大きさだ。まぁ、人が入っているんだが……もぞもぞと動いている。よく見ると足元にはポーションの瓶が転がっている。
私はナイフで糸の塊を割くと冒険者がずるりと落ちてきた。男性二人に女性一人。3人とも蜘蛛以外からの傷を受けていた。
「ううう……」
「大丈夫ですよ。治療しますね?」
私はリーナさんに貰ったポーションを使い、彼らに治療を施した。弱々しかった呼吸が次第に安定してくる。
「ありがとう……」
落ち着いた彼らは安心したのか眠りについた。
私一人で三人を運ぶ事は出来ないので、魔物避けの結界を張り、彼らが目覚めた時に飲めるようにポーションを彼らの周りに置いてきた。これなら回復して自力でダンジョンから出られるだろう。あぶく銭ならぬあぶくポーション。困った時はお互い様である。
さて、これで明日の事前準備は終わった。あぁ……ノクトの活躍が楽しみで胸が躍る。どんな立ち回りを見せてくれるのだろう!!
私は軽い足取りでダンジョンを後にした。
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