20点は大きいのです
相内充希
第1話
あれは、まだ高校生だったころ。
私は定期テストで戻ってきた国語の答案用紙を見て愕然としました。それもそのはず。得意なはずの科目なのに、そこに書かれた点数が見たこともないくらい低かったのです。
すべてにおいて平均値といってもいい私ですが、当時国語だけは得意だったのですよ。
(え、なんで?)
あわてて確認すると、漢字の回答欄がすべてバツ……。
え? 全部合ってるのに?
……ええ、すぐわかった方もいるでしょう。そうなんです。私、その試験でうっかり、漢字の回答を1つズレたところに書いていたのです。オーマイガッ!
当時、国語のS先生は手書きでテスト用紙を作っていたので、何かを見間違えたのかもしれません。幸か不幸か、漢字の次の選択問題を一問、これまたうっかり飛ばしていたおかげで(おかげ?)、その後は正しい欄に答えを書いていたのでどうにか平均点は超えていたのですが、さすがのやらかしに呆然でした。
そんな私にS先生も、
「(漢字自体は全部合っていたから、できれば)丸をやりたかったんだけどなぁ」
と、苦笑いをされてました。恥ずかしっ。
そもそも国語が得意科目になったのにはきっかけがありました。中学時代に受けていた模試です。今は分かりませんが、当時受けていた模試(いわゆる高校入試のもの)には必ず国語のテストの中に作文が入っていたのです。
たとえば、――〇〇をテーマに、以下にあげられた単語をすべて用い、二段落、250文字で書け――といった感じの問題です。
はっきり言って、小学生のころから作文に苦手意識があった私。
漢字、長文読解などのほかに、しれっと250~300字程度の作文が必ず入る模試を見て思いきりしり込みしました。
でも配点は20点。大きい……大きすぎる。
他の問題を解いたうえで作文まで書くなんて……と思いましたが、空白で出すわけにもいきません。ええ、書きましたとも。条件ばっちり文字数もクリアで。とりあえずでも埋めることが大事ですからね。
ところが返ってきた結果にびっくり。作文が満点だったのです。
偶然かな? と思いましたが、次もその次も作文は満点。
昔から文章が変わってるだの切り口が珍しいだのと先生に書かれるのが苦手だったのですが、おそらくテストは減点方式。文章が変わってようが切り口が珍しかろうが、設問に沿っている限り問題ないわけです。
(あれ? 作文と漢字を完璧にすれば、国語は大丈夫なのでは?)
単純なので、確実に点がとれると分かったら国語の勉強を頑張るようになってしまったのですね。高校生になったらテストの中に作文は入らなくなりましたが、最低限定期テストの漢字は満点にしようと思ったのです。
なのにやらかしてしまった「うっかり」。
別の視点で見れば、高校の定期テスト、しかも得意科目だったからマシともいえるかもしれません。これが苦手な科目だったら、さすがに20点のマイナスは目もあてられなかったはず。
ショックはショックでしたが、わりとすぐに切り替え、次からは念入りに見直しをするようになりました。
ところでこのテストで苦笑していたS先生には卒業の時、一言書いてほしいと私が差し出したノートに、
「君はいつか小説を書きなさい」
というメッセージを下さいました。
当時私は年間100冊以上の本を読んでいたので、小説が好きなら書く方もチャレンジしてみたらという意味だったのかもしれません。
実は当時も一人で、もしくは友達とリレー形式で小説を書いていたので、友達と「書いてるよね」なんて、クスクス笑いあったのを覚えています。
先生、今も小説を書き続けているんですよ。
マイペースなうえ、あいかわらず誤字という「うっかり」はやらかしていますけどね。
そしてこれを書きながら、カクヨムでお題を見るとついつい倒しにかかってしまう理由がわかってしまいました。模試の「解かねば!」からだったのでしょうね。
ということで、お題執筆一問目の課題「試験」はエッセイでした。
20点は大きいのです 相内充希 @mituki_aiuchi
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