試験はトライ&エラー・エラー・エラー……
まりんあくあ
第1話 試験の壁
女の子は一人で出来ることがほとんどありません。生まれる前に頭の中にケガをしたのだと両親からは聞かされていました。そのため、上手く自分の身体をコントロールできません。一人では座れない、歩けない。もちろん上手く話すこともできません。
それでも普通の小学校に行きたかった女の子は、肢体不自由児の通級学級がある小学校に通うことになりました。一人では書けませんが書道を習っていたので、鉛筆を一緒に持ってもらうと字を書くことができました。テストは支援学級の担任の先生と一緒にしていました。時には百点満点を取ることもありました。
ところが、中学校になるとテストは試験に変わります。一緒に鉛筆を持ってもらうと不正をしていると思われてしまいます。
女の子は困りました。i padに文字を打てば話してくれる機能のあるアプリを入れましたが、一人では上手くできませんでした。話す練習もしてみましたが、やっぱりうまく聞き取ってもらえません。
女の子は勉強が好きでした。漢字も掛け算も、歴史も科学もちゃんと理解したいました。でも、それを表現する手段が限られていました。唯一女の子のことをわかってくれる母親は、試験に参加することを認めてもらえません。
女の子は困りました。
どうしたら、うまく答えられるんだろう?
女の子は普通の高校に通いたいと思っていました。大学に行きたかったからです。高校入試を受けるためにどうしたらいいのか、病院のリハビリの先生にも相談しながら試行錯誤を重ねました。
透明文字盤を目で見て答えるのは?
女の子は身体が動いてしまうので、どこを見ているのか分かりにくくてできませんでした。
ひらがな表を指で指してもらって、合図をして答えるのは?
タイミングよく「うん」と答えるのが難しすぎました。
数字盤を使ってみては?
1〜9と0の数字を上下二段の大きな数字盤にしてもらうと、なんとか握った手で指すことができました。それでも間違えてタッチしてしまうこともあるので、タッチした数字を、
「◯でいいですか?」
「うん」(はい、はうまく発音できません)
再度確認してもらう方法でなんとか答えられるようになりました。
何度も練習しているうちに、一度に二回くらいはタッチできることがわかりました。
そこで数字と文字を対応させる方法を編み出しました。「5と5」で「あ、またはa」、「5と4」で「い またはb」。
タッチをするだけでもとてもエネルギーを使います。それでも女の子は頑張って答える練習を続けました。
鉛筆を持ってもらえたら70点取れるテストが10点や20点になることもありました。それでも女の子はあきらめませんでした。
高校入試はその文字盤を持ち込み、試験時間を延長してもらって支援学級の担任の先生と受けました。
結果は……不合格。
でも、2次募集の面接で受かり、無事高校生になれました。
高校の勉強はさすがに難しかったようですが、テストを選択問題にしてもらい、頑張って答えています。
毎日が 楽しい!
トライしてもエラー、エラー、エラー……失敗するのが当たり前。失敗したら、さっさとあきらめて、
「はい、次!」
いつでも前向き go positive!
とってもポジティブシンキングで乗り切っています。
試験はトライ&エラー・エラー・エラー…… まりんあくあ @marine-aqure
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます