第11話 体調不良


「あ、本田ちゃん。目ぇ覚めた?」



「あの…私…」



周りを見渡し、ツンと香る消毒液の匂いで、ここが医務室だという事に気がつく。



「仕事中に倒れたんだよ。無理しないでって言ったのに。」



「迷惑かけてすみません。」



「謝らないで。気付けなかった僕も悪い。今日は大人しく家に帰って休んでね。」



「はい…」



「具合はどう?」



「横になってだいぶ良くなりました。」



「じゃ、行くよ!」



そう連れられて来たのは、社員専用の駐車場。え?と困惑する私に南さんが、車のキーをひらひらさせてみせる。



「送って行く。」



「自分で帰れますよ。そんな迷惑かけれません。」



「上司命令。」



そう言われてしまっては、断れない。

南さんの言葉に甘えて、送ってもらう事にした。



「本田ちゃんさぁ。」



「はい。」



「戸田さんの事どう思う?」



「戸田さん…ですか?」



突然の質問に少し戸惑ったが、言葉を続けた。



「とても可愛らしい方だと思います。女の私から見ても凄く魅力的です。私は持っていないものを沢山持っていて羨ましいです。」



「そっか。」



少しの沈黙のあと、南さんの学生時代の話や、入社当時。兄弟の話など、さっきまでの沈黙が嘘だったかのような時間を過ごした。



「ありがとうございました。」



「いえいえ。きちんと家で休むこと。体調次第では、明日は休んで良い。本田ちゃんは、頑張りすぎ!」



ガシガシと頭を撫でられた。



「じゃあね。お疲れ様。」



「はい。お疲れ様でした。」


南さんの車にぺこりとお辞儀をして、自分の家へと帰った。


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