第10話 忘れたい


「今日も一日頑張りますか」



と腕まくりをする南さんの横で、朝から頭痛が酷く体調の悪い私。



「そうですね。」



「本田ちゃん、大丈夫?なんだか顔色悪いけど…」



「少し頭が痛くて…でも、薬も持って来たので大丈夫ですよ」



「無理しないでね。辛くなったら言いなよ。」



月末というのもあって大忙しの経理課。皆がせっせと業務をこなして居る中、1人目立って居る人物。



「戸田さん、悪いんだけど、これお願い出来る?」



仕事回らなくてと手を合わせる経理課の先輩。



「昨日、ネイルして来たばかりなので、タイピングをする仕事はできないんです。」



ニコッとアイドルスマイルで返事をするのは、中野さんの婚約者の戸田さん。



彼の婚約者として、なぜか経理課に配属された戸田さん。配属されてからというものの、正直居ても居なくても…という量の仕事しかしない。



「あ!翔さん!」



パタパタと中野さんに駆け寄っていく戸田さん。女の私から見ても、凄く可愛い。



「ああ。美希。」



ズキッと胸が痛む。視線の隅で2人が会話して居るのが見える。見たくない。見たくない。



今日は、特に見たくない。



「本田ちゃん?!」



そこで私の意識は、途切れた。

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